教育資料館 平成17年度 特別展示

日中小中学生書法展の報告

教育資料館館長 松本宏揮

今年も大学祭参加行事として、教育資料館の特別展示を実施した。期間は11月4日から7日までで、7日には特別講演会を開催し、本学大学院出身の張莉先生(京都造形芸術大学非常勤講師・元天津市少年宮教師)に「中国の書法教育について」の題目で講演をしていただいた。


[趣旨]

 文字の教育は、日本も中国も漢字を中心に学校でも社会でも盛んである。日中の子供たちが、書道や書法芸術をどのように受け止めているか、実態を知ろうとしたのである。書道や書法教育の将来のために、いろいろな問題提起になればと考えたからである。
 昨年から、大学のフレンドシップ事業に書道科も参加している。今年も夏休みに小・中学生に「書道を楽しもう」と呼びかけて書道科の学生が指導に当たった。そのときに制作された作品(半切条幅29点)を展示した。
 中国の作品は、天津市の「少年宮」と「少年書法芸術学校」に依頼して半切条幅15点ずつ、合計30点を出品して頂いた。「少年宮」も「少年書法芸術学校」も、学校の放課後に開かれている研究施設だそうだ。
 日本と中国、同じように漢字を使っているが、日本では漢字から「かな」を作って便利な表記法を工夫した。そこで小・中学生の書法作品を展示すれば、現在の両国の書法や書法教育について、若い世代での考え方などがよくわかるのではないかと考えたからである。


[特別講演会]
11月7(日)、午後1時半から「教育実践センター」の多目的ホールで、「中国の書法教育について」の題目で、張莉先生(京都造形芸術大学非常勤講師・元天津市少年宮教師)に講演をしてもらった。


[張莉先生の講演の要旨]

 中国の書法教育は学校でも行われているがやはり硬筆書法が中心で、いわゆる簡体字を習得するのが目的である。伝統的な毛筆書法は、学校とは別に設けられている「少年宮」や「少児書法芸術学校」に行って放課後や休日に学ぶのだという。
 少年宮とは、行政区ごとに設けられた校外活動の施設で、中国の天津市には15カ所ある。児童や生徒は、放課後や休日に来る。今は有料(半年で約3600円ほど)だそうだ。学科は、声楽・演奏・舞踊・塊が・書法・将棋・コンピューター・英語など、30学科、400余のクラスがあり、年間9000人ほどが習っている。
 書法は約1000人の受講者を10人の教師が指導する。ここの教師は学校の教師よりも専門職としてのプライドが高いそうである。
 一人っ子政策で子供の教育には親の期待も高い。少年宮の活動は盛況である。
 少年宮のほかにも、「少児書法芸術学校」が5年前に開講し、約1万人が受講、20人の教師が指導に当たっている。すでに3000人余が修了。有料(半年2300円)で硬筆と毛筆に分かれて学習する。
 学書の方法は臨書(手本を見て書く)や模書(手本の上に紙を敷き字を写す)があるが、中国では模書が意外に重視されていて、いろんな段階の教材(描紅・単鈎・双鈎など)がある。そして何年間も取り組んで、手本にした名人の書法の型を習得する。その手本は教える担当教師の得意なもので、習う側が選ぶのではないそうだ。顔真卿や欧陽詢の書の人気が高いし、教師の得意技でもあるようだ。
 天津市の書法教育は、中国全土のなかでも高いレベルにある。が、近頃は「型の習得」を窮屈に感じる子供もいるので、日本の子供のように楽しんで書けるような、新しい指導方法も必要だと感じている、という張莉先生のお話だった



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