映像メディア設備の整備状況と実験的作成の報告


藤原 公昭

奈良教育大学教育実践指導センター研究紀要 No.4 No.4 1995 pp157-168

Synopsis:

従来の光学的メディア(35mmスライド、OHP)、ビデオテープ(VTR)に加えコンピューター グラフィックス(CG)を用いた静止画・動画の作成システムの整備を開始した。これによる自然科学系の素材VTRの作成過程とサンプルの教材作成の試行を報告する。また、LANによる学内外からの本設備の利用方式も考察する。

Key Words: Computer Graphics, Local Area Network, Scientific Visualization

目次
  • 1 CGアニメーション作成システム
  • 2 LANによる利用方法
  • 3 画像データの作成手法
  • 4 サンプルデータ

    始めに

     従来実践センターにおいて各種メディアの開発・研究・実践が行われている。現行の「教育の方法及び技術」のカリキュラムとの関連において、主要に、1)35mmスライドフィルム、OHP等の光学的メディア、2)VHS、8mmβ等のビデオ機器、及び3)スタンドアローン形態のパーソナルコンピューター等の器材が整備・利用されている。光学機器、ビデオ機器については、比較的良好な整備状況で、授業・実習および学内共同利用に供されている。この種の機器は、これまでの視聴覚教育の成果として各学校での整備状況も良好で、日々の実践に活用されていること、また製品技術的にも安定していることを反映している。

     他方、コンピューター関連機器の本センターにおける整備状況は十分なものとは言えない。特に昨年(平成6年)7月、情報処理センターとの建物の分離により、実践センター内で利用可能な共同利用のコンピューター設備はわずかにパーソナルコンピューター4台のみとなった。パーソナルコンピューターを巡る技術革新があまりにも急激かつ流動的であり、「標準的な」設備・環境も見定め難い状況ではあるが、教育メディアにおけるコンピューターの果たす役割が一層大きくなる中で、センターとしての情報機器の整備が急がれている。

     幸い、平成5年度の第3次補正予算で、学内LAN(Local Area Network)整備が行われ、学内共同利用のサーバー機器の一部として、実践センター内に最新のグラフィックワークステーションとビデオ録画装置一式が導入されることになった。また、いわゆる「マルチメディア」対応のWindows機も一台、専任教官(藤原)研究室に導入され、上記ワークステーションとLANで接続し、相互運用を可能とした。本報告では、これらの装置の運用方法を解説し、理科教材の素材として利用できるCG(Computer Graphics)の紹介を行う。

    1 CGアニメーション作成システム

     現行のTV・ビデオは毎秒30枚の画像(フレーム)を連続的に表示することにより動きを表現している。毎秒のフレーム数(フレームレート)をこれ以下にすると、滑らかな動きと感じられなくなることからこのレートが定められている 。コンピューターが生成する画像からアニメーションを作成する際に、このフレームレートを達成するためには二つのアプローチがある。

     コンピューターの画像作成能力を十分大きくし、実時間でアニメーションを生成するアプローチをリアルタイムアニメーションと呼び、直接的で明快な方式である。特に、人間との相互作用によりシーンの展開が分岐・変化する類の応用、例えばフライトシミュレーターやいわゆるVR(バーチャルリアリティ)ではリアルタイムアニメーションが必須であり、リアルな画像を高速で描画するために高価なCG専用コンピューターが開発されている 。あるいは卑近な例では、ワープロや表計算の手順をビデオに撮るといった例もリアルタイムアニメーションと言えよう。この際、コンピューターディスプレーの映像信号をそのままビデオに録画することができないため、信号方式を変換する機器(Scan Converter )を介在させる必要があり、これによって画質の劣化は避けられないが、簡便なビデオ収録の方法としてよく用いられる。

     第2のアプローチは、「コマ撮り」である。画像生成と一コマ録画を、自動運転で繰り返す方式で、コンピューターの画像作成速度がリアルタイムでなくともアニメーションを作成でき、コンピューターの性能は、収録に要する時間の多寡を決めることになる。一コマ録画は家庭用のビデオでは通常不可能だが、業務用録画装置では一コマ(フレーム)単位に録画、書換えができる。ことに、録画可能な光ディスク装置はこの目的に最適である。パーソナルコンピューターや通常のワークステーションを用いて、高画質でリアリスティックなCGアニメーションを実現するためにはコマ撮り装置が不可欠となる。目的とするCGアニメーションの性格に応じて、この2つのアプローチを使い分ける必要があり、今回センターではコマ撮り可能な録画装置と制御装置一式を導入し、既存のスキャンコンバーター装置と併せ、設備の充実を図ることとした。

     実践センター内メディアルームに設置される上記装置の接続系統を図1に示す。



    この構成における各機器の機能・仕様の概要を以下に示す。

    1-1 グラフィックサーバー装置

     Hewlett Packard社製のワークステーションHP9000モデル715/64にグラフィックアクセラレーターを装備している。計算速度、描画速度ともワークステーションとしては標準的な性能を持っている 。DTP(Desk Top Publishing)ソフトウェアと科学技術用可視化ソフトウェア(AVS)を用意し、初等教育用教材から研究用の画像作成まで広く利用できることを目指した。

    1-2 録画制御装置(ビデオサーバー)

     ワークステーション等で作成された画像のデータをLAN経由で受け取り、蓄積し、ビデオ画像信号に変換し、録画装置(光ディスク装置またはVHSビデオレコーダー)へ送る。同時に、録画装置のコマ撮り制御を行う。CG録画の制御において中心的な役割をもつことから、この機器は特定のコンピューターには付属させず、LANに接続している総てのパソコン・ワークステーションから利用可能としている。すなわち、本装置へのデータ転送と制御司令はすべてLANのファイル転送機能(ftp )のみを用いているので、画像を作成したり録画を制御するコンピューターは1-1で述べたグラフィックサーバーである必要はない。

     研究室等から本装置を利用する方法は次章で例示する。

    1-3 光ディスク録画装置

     追記型(Write Once)レーザーディスク録画装置で、ディスク1枚あたりの録画可能時間は48分(両面)、または静止画87,000枚(同)である。ビデオテープ装置に比べて画質が高品位であり、しかも静止・スロー・スキップ再生時も画質の劣化が無い。更にコンピューターを接続して、プログラム再生等の演出が可能である。本装置は追記型であり、ディスク上では消去・編集ができないことから、完全な番組の作成(いわゆる「完パケ」)用ではなく、教材の素材としての動画や静止画の蓄積に用いるのが適切である。実際の教材ビデオ作成は、プログラム再生機能を用いて、VHSや8mmβ上で行うことになる。

    1-4 カラービデオプリンタ

     カラービデオ プリンターとして現在A6版の「プリンパ」が利用されているが、A4版対応のプリンターも導入した。本装置はCG画面の画質を損なわないように、1-2の録画制御装置から直接RGB信号を入力できるようになっているが、従来の「プリンパ」と同様な利用方法も可能である。

    1-5 パーソナルコンピューター

     学内LANとは別枠で、多目的のパソコンを1セットメディアルームに用意する 。Windows機種でありビデオキャプチャーおよびサウンド機能を持つ。また、LANに接続される。このパソコンはCG録画装置の制御、学内LANの端末として利用できるだけではなく、マルチメディア教材の評価・実験・作成に活用されることを期待している。

    目次にもどる

    2 LANによる利用方法

     前章で述べたCG録画装置の一式は、共同利用設備として、実践センターに置かれているが、LANによって全学から利用可能となっている。また、1995年2月よりInternetと接続されることにより、学外および附属校園からの利用も可能となる。このような共同利用が可能である前提として、本装置が特定のコンピューターの付属装置ではないということを前章でも述べた。具体的には、画像作成のための計算機能はどのコンピューター上にあってもよいということである。本装置はLANを経由して所定のフォーマット(形式)のデータを受け取ることによって動作する。データがどのコンピューターで作成されたかには依らない。また、画像データのフォーマットも汎用的なもの であり、いかなるコンピューターでも生成可能な形式となっている。この事から、簡易な画像であれば(あるいは十分な時間をかければ複雑な画像であっても)パソコンを用いてCGアニメーションを作成することが可能となっているし、情報処理センターなどの高速コンピューターを利用して迅速に精細な動画を生成することも選択できる。

     さらに、録画装置の制御と計算機能を分担するコンピューターの制御も、計算を行うコンピューター自体と分離してよいので、通常は手元にあるパソコン端末を用いることができる。このように、「計算機能」と「制御機能」がCG録画装置と分離し、LAN経由で交信する構造になっていることから、既存端末、既存ソフトの活用等の多様な利用形態が可能になっている。


    目次にもどる

    3 画像データの作成手法

     CGアニメーションは1/30秒毎の静止画の連鎖として実現される。各静止画を作成する手法は全く任意であり、最大解像度648×486の画像要素(Picture Element=PIXEL)毎に光の3原色(RGB)の強度(Intensity)が指定されるファイルを生成するソフトウェアあるいは画面ダンプユーティリティが利用可能である。

    3-1 パソコン利用の画像データ作成

     PC98等の描画ソフトや画面ダンプユーティリティで画像要素のRGB値をそのまま記録するいわゆる「ベタ」ファイルが作成できるが、この形式のファイルから動画の要素ファイルを容易に作成できる。また、MacintoshのPICT形式ファイルからも変換可能である。

     その他の形式のファイルからの変換のためのツール類も順次整備していく予定であるが、むしろパソコンでアニメーションを作成する際に問題となるのは、バッチ機能が弱いので「自動運転」を行うためには、何等かのソフト開発が必要になることであろう。例えば30秒間のアニメーションでは30×30=900枚の画像を少しずつパラメーターを変えながら、次々に生成してくが、これを手動で行うことは現実的でない。しかしながら、DOSのバッチコマンドではパラメーターの値を変化させてループを実行させることができない。BASICでいうFOR-NEXTにあたる制御構造を、応用ソフトの外に作る必要があり、これはCase by Case の対応になる。

    3-2 ワークステーション利用の画像データ作成

     ワークステーション上のグラフィックソフトウェアは通常独自の形式の画像ファイルを生成するが、その形式は公開されていることが多いので、容易に利用可能な形に変換できる。今回、実践センターに導入されるワークステーションのAVS からは直接、録画制御装置に画像転送ができる。その他のソフトウェアでもX-Windowに描画する場合は、X-Windowのダンプ機能を用いて画像ファイルを得ることができる。

     ワークステーションを利用する最大の利点は、3-1の項でパソコンの欠点と関連して述べた「自動運転」が簡単に行える点である。UNIXワークステーションではshellと呼ばれるコマンド処理言語を用いて応用ソフトへ与えるパラメーターの値を変化させながらループを実行することが基本機能としてサポートされている。このshellの機能によって、一個の画像を作成するソフトウェアが用意できれば、直ちに動画への応用が拓けることになる。

    目次にもどる

     サンプルデータ

    奈良教育大学教育実践研究指導センター研究紀要 No.4 1995