星座と星図

野村 勉

 星図と密接に関係のあるのが星図であるので、これから星座の話をしながら星図にもふれていきたいと思います。
 星座は、星空の中で目立った星を結び付けて作る事から始まりました。このことを初めて試みたのは、古代オリエント (現在のイラク)に新バビロニア王国を建国したカルデヤ人だといわれています。それによると、横道12星座、北半球12星座、 南半球12星座があり、今日の星座の原形と推察されます。この他にも色々な国で星座が考えられました。しかし、 同じ星を別の星座に入れたりして、不統一や混乱を招くようになりました。
 2世紀ごろ、ギリシャのプトレマイオスは、それまでのものを48星座にまとめました。すなわち、@横道の北 21星座・ A横道帯 12星座・B横道の南 15星座 です。彼は、「科学体系13巻(メガレ・シンタクス)」を著しました。 この中には48星座が記載されています。更に、1022個の星の目録も載せられています。(この体系は9世紀になってギリシャ語から アラビア語に翻訳されて「アルマゲスト」と呼ばれました。)
 アラビアでは、13世紀の1215年にモハマドが北天と南天を合わせて全天の星座絵図を刊行していました。北極はりゅう座にあります。 1515年には、ドイツの横道星座図が刊行されました。1540年にイタリアの大司教ピッコロミニが印刷星図を出版しました。この 星図には星座絵はありませんが、1等星から4等星までが載せられていて天球儀製作や占星術に利用されました。
1603年には、ギリシャのバイエルが「ウラノメトリヤ(天球譜)」を刊行しました。ここでは、南方の12星座を加えて60星座として 発表しました。これには、恒星の明るさ順にギリシャ文字やローマ字のアルファベット記号が付けられ、観測に役立てられました。 1616年には、オランダのホンディオの作った航海図として発行された星座絵図は、裏返しの横道の極を中心とした南北全天図です。
 1627年には、ドイツのシルラーのキリスト教星座図が反転星図で刊行されました。
 1637年にウズベグ共和国サマルカンド天文台のウルル・ベクは新ウルタン星表を作りました。彼は太陽を中心とした横道を重視し、 恒星の黄径と黄緯の研究をしました。彼の死後3年後の1690年に1018個の恒星表と美しい星座絵図が彼の名前で刊行されています。 これにはギリシャ神話に基づいた54枚の図像が挿入されていました。
 1660年には、オランダからセラリウス彩色星座図が刊行されました。
 1687年には、イタリアのブルナッチは、北天・南天の全天を網羅した横道座標の円形天球図を作りました。その外側には望遠鏡による 惑星が描かれています。ヘベリウスは「ヘベリウス星座図絵」それに天球を裏側から見た「北天星座図」と10星座を加えた1564個の 星表を刊行しました。1699年には、ゴールドバッハ星座図と恒星図を見開きで対照させたものも刊行されました。1678年には、 グリニチ天文台初代台長フラムスチードはそれまでのものに比べて精密な恒星表を作りました。この恒星表は1729年にロンドンで 刊行されましたが、恒星の位置・番号・所属星座名・光度・恒星の固有名称が記入されています。この恒星表には天球図譜はギリシャ 神話に基づく30枚の星座絵が付いていて、有名な歴史画家ソーンヒルが描かれています。この本の日本語訳は1968年に「フラムスチード 天球図絵」として日本で刊行されています。
 こうして新しい星座が作られてくると、新しく発見された恒星も載せられて非常に錯綜してきました。特に、一つの恒星が2つ以上の 星座に所属するような事もでてきました。そこで、1922年の国際天文同盟(IAU)の総会で合理的に整理することを決議し、ベルギーの ウルク天文台長デルポルトの下で、「星座決定委員会」が発足し、その答申が1928年の総会で決定され、1930年に公表されました。 それは、全天を南北線は時間の弧で、東西線は赤緯円の弧に沿って分割し、それを星座の境界線とする。こうして、現行の88星座が 決定されました。現在の星座はこうして天空の領域を示しています。
 この星座も最も広い星座と最も狭い星座の19倍の広さがあります。これは、今までの星座をできるだけ尊重するために境界線を 引いたのでやむを得ない面もあると思います。
 星座の形は長年の間に恒星の位置変化で変わっていきます。同じ星座の星でも地球からの距離はまちまちでお互いに何の関係もありません。 境界線を越えたら星座名が変わるかも知れません。今後は星座名ではなく、別の方法が取られる(例えば赤径・赤緯で表す)かも知れません。 しかし、星座は星のロマンとしてこれからも残っていくでしょう。
参考文献
 坂上 務「暦と星座のはじまり」河出書房新社2001
                      (理科教育講座)