平成20年度卒業式・修了式

 平成21年3月25日、奈良教育大学講堂において、平成20年度卒業式及び修了式が挙行されました。
 教育学部卒業生264名の総代として中村香央里さん、大学院教育学研究科修了生61名の総代として高橋朋成さん、特別支援教育特別専攻科修了生13名の総代として大江千晶さんにそれぞれ卒業証書・学位記が授与されました。

 式では、学長告辞、在学生総代送辞に続き、卒業生及び修了生総代の糸井綾さん(教育学部)が、「私たちは、大学で学ぶ日々を通して、社会に生きる一員としての自分を認識し、その自分に何ができるのか、また、何をなすべきなのかを模索してまいりました。そして明日からはそれぞれの旅路につき、より広い世界へと新たな一歩を踏み出します。どんなことが待ち受けていても、この大学で培われた精神を心の支えとし、前を見据えて、力強く進んでいくことが出来ると信じています。また、今後様々な経験を重ねていく中で、一人の人間としてさらに成長するよう努め、自分の持ちえる力を最大限に発揮して、幅広く社会に貢献してまいります。」と答辞を述べられ、終始華やかな雰囲気の卒業式となりました。



卒業生の皆様、ご卒業おめでとうございます!
今後、本学で学ばれたことを糧に、各方面にてご活躍されることを心よりお祈りいたします。


奈良教育大学 企画・広報室
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学長告辞

 本日ここに、元学長の赤井達郎先生、前学長の大久保哲夫先生をはじめとする名誉教授の先生方、同窓会並びに後援会の役員の方々のご臨席を賜り、また、奈良教育大学教職員の参列のもと、第57回教育学部卒業証書・学位記授与式、第25回大学院教育学研究科学位授与式、並びに第17回特別支援教育特別専攻科修了証書授与式を挙行できますことは、本学にとりこの上ない慶びであります。

 教育学部卒業生264名、大学院修了生61名、専攻科修了生13名、あわせて338名の皆さん、卒業、修了まことにおめでとうございます。本学の役員、教職員を代表して心からお祝いを申し上げます。
 また、ご列席の多数のご家族の皆様には、卒業のこの日を迎えられたことに心よりお慶びを申し上げます。
 壇上には、皆さんから向かって左に、永年にわたり本学の発展に尽くされ、3月末をもって定年ご退職をお迎えになる4名の先生方、梅村佳代先生(教育学・教育史)、竹原威滋先生(ドイツ文学)、長友恒人先生(文化財科学)、松村佳子先生(理科教育)にも着席いただいています。教育大学にふさわしい多彩な学術分野の研究と教育に、情熱を注がれた先生方であります。永年にわたる本学へのご貢献に、卒業生・修了生の皆さんとともに感謝の意を表したいと思います。ありがとうございました。

 皆さんが在学したこの4年間あるいは2年間、1年間、本学は、国立大学の法人化をひとつの契機として、「高い知性と豊かな教養とを備えた人材、特に有能な教育者を育てる」という本学の使命をあらためて確認するとともに、中期的な教育目標を定めて、教育内容はもちろん就職支援のための様々な取り組みを進めてまいりました。本日は、この間の学びの成果を卒業生の皆さんとともに共有する意味も込めて、卒業証書、修了証書、ならびに学士、修士の学位記を皆さんに授与いたしました。

 4年前の入学式では、どのようなことをお話したのか、少し調べてみましたが、そこでは特に2つのことを強調しました。一つ目は『大学での学び』、二つ目は『教育者としての学び』というものでした。言い換えると、「学問・学芸としての学び」と「教師という専門職としての学び」ということになります。
 今、教室では、多様な子どもたちを受け入れ、子どもたちの心を惹きつけながら教えることのできる教師が求められています。そのためには、「どう教えるか」というHow toだけの問題ではなく、人としての豊かな教養と心を備えていること、ものごとの本質をしっかりと理解していることに加えて、教育実践に関する高い専門性を身につけていることが必要です。また、様々な教科の内容とその背景にある深い学識を身につけ、それらの内容を子どもたちに分かりやすく語ることが求められています。 3回生、あるいは4回生で経験した附属学校での教育実習を経て、より一層教師への意志を強めていったことを期待しているのですが、子どもたちの前で、戸惑いやもどかしさ、時には力のなさを悔やんだこともあったかと思います。
 最近では、特に大学院教育に関わって「理論と実践の往還」という言い方がなされることが多くなりました。このことは、高度専門職業人養成のための大学院教育に限ったことではありません。学部教育にかかわっても、大学での学びを附属学校などでの教育実践に生かし、そこから何を学び、何を獲得したか、そのことを卒業までの間に、しっかりと理論化すること、論理化し、可視化することが必要です。
 そのことを、皆さんは自覚的には行わなかったかもしれませんが、大学や附属学校の先生方の指導助言を通して、あるいは様々な場での学生同士の討論を通して、自らのものとしたといえるのではないでしょうか。
 正規教員あるいは期限付教員として教壇に立つ皆さんは、新任教員として様々な困難な課題に直面することとなります。4年間で身につけた「教育実践力」なるものは、結果としてまだまだ十分ではなかったことを実感することのほうが、率直に言って多いのだろうと思います。
 このようなことは、今の時代の新任教員に限ったことではなかったといっていいですが、しかし、グローバル化した現代社会における急激な変化に対応して、かつての新任教員が直面した課題よりも、もっと複雑で困難な課題が皆さんを待ちかまえていることは容易に想像できます。したがって、それに打ち勝つ、精神的な強さと行動力が必要だと思います。それは、しかし、精神論だけであってはなりません。

 皆さんは「職能成長」という言葉を聞いたことがあるかと思います。本学では、卒業生・修了生に身につけて欲しい教師としての力量の一つに「職能成長力」を掲げています。それは、「教師の仕事や役割、責任を自覚した上で、教師として自己成長する意味とその方法を理解し、自ら実践することができる。」ということです。
 教師あるいは教育者は「職能成長」を不可欠のものとする代表的な専門職といえるのですが、どのような職業に就く人にとっても、職業人としての成長が可能となる力を獲得していく必要があることは変りません。
 ここでは、教師に限定しますが、目の前の子どもたちに関わる困難な課題に対しては、その課題を解きほぐす力、錯綜する情報を選りすぐる力、問題の所在を明らかにして、同僚とともに協働して解決する力、さらには、親である保護者あるいは地域社会とのつながりを意識しつつ、解決のための行動に結びつける力、このようなインテグレートされた力を、生涯にわたって発展させていくことが重要となります。さらにいえば、最近では、「コンプライアンス」という言い方で「法令順守」が叫ばれますが、法律に違反しなければ何をしてもいいというものではないはずであります。そのときの支えが、人としての倫理観、価値観であります。
 その中で、教師としての仕事の「やりがい」、何ものにも変えがたい使命感を獲得していくのであろうと思います。皆さんは、その基礎となる多様な学びの方法を大学、大学院や専攻科で獲得したはずであります。
 教師という職業の魅力の一つは、子どもたちの豊かな成長を通して、教師自身が多くのことを学び、ひとりの人間としての自分自身の成長が達成される、という点にあるのでしょう。
 皆さんは、小規模な大学での恵まれた教育環境の中で本日を迎えられたわけですが、これからは、他大学の卒業生をはじめとして、多くの人たちの中での職業生活や社会生活がはじまります。大学院に進む人は、高度な教育研究の場に身を置くこととなります。
 すでに皆さんが実感されているように、環境問題をはじめとする地球的規模の課題や厳しい社会的・経済的状況の変化が予想される中ではありますが、そのようなときにこそ、自らを見失うことなく皆さんがこれまで蓄えてきた力を思う存分発揮していただきたいと思います。

 さて、昨年秋には、奈良教育大学はその前身である奈良師範学校の開校から数えて120周年を迎え、本学同窓会や後援会のご支援を得て、様々な記念行事を行ってきました。奈良教育大学のイメージ・キャラクターとして定着した感のある「なっきょん」も、皆さんのアイデアの中から生まれたものです。そして今年は、戦後、奈良学芸大学として出発した本学が、多くの国立大学とともに創立60周年を迎える記念すべき年でもあります。皆さんは、そのような大きな節目の時代の卒業生・修了生であり、次の60年の歴史を創造する最初の卒業生として、私たちは大いなる期待を寄せています。

 最後に、皆さんに一つお願いがあります。学部卒業生と大学院修了生の皆さんには、前もって「卒業生(修了生)アンケート」の記入を副学長名で既にお願いし、本日、その回収をさせていただくこととしています。
 このアンケートでは、これまで通りの内容に加えて、本学が平成19年度から取組み始めた「4年間の学びの成果」に関する質問が含まれています。
 卒業式当日なので、未記入の皆さんには、後ほど少しだけ時間をいただいての記入をお願いいたします。晴れの席の後なので「ご祝儀」という気分もあるかもしれませんが、皆さんの後に続く後輩諸君のためにも、奈良教育大学での学びを振返り、何を得たのか、あるいは得られなかったのかについて、また大学への要望も率直に記入していただくようお願いします。皆さんの意見を、今後の学士課程教育の改革を進めるための基礎資料として役立てたいと考えています。

 一方で、そもそも教育の成果は1年や2年で目に見えてくるものではないと考えることも、当然のことです。これからの5年先、あるいは10年先の皆さんの社会での活躍を期待するゆえんでもあります。その意味で、学部卒業生の皆さんには、何年間かの現職経験を経た上で、あらためて奈良教育大学の大学院に入学されることをお薦めしたいと思います。
 奈良教育大学の卒業生・修了生としての誇りと高い志を持って、全国各地域で、それぞれの分野で、これからも成長され、活躍されることを心より願っています。 以上、告辞といたします。

平成21年3月25日
奈良教育大学長 柳澤 保徳


奈良教育大学イメージキャラクター“なっきょん”

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