教育大学の特色・地域性を生かした芸術療法の総合的研究
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- 事業の概念図(PDF)
- なぜ今、芸術療法か?
ストレス社会といわれる現代、だれでも「こころの病」(心身症)にかかる可能性があります。しかし、科学や医療が格段に進歩した今日でも、効果的な治療法が少ないのが現状です。そんななか、芸術療法(art therapy)に熱い視線が注がれています。「こころの病」の予防(ストレス・マネージメント)や治療に有効だと考えられているのです。また、少子・高齢化による更なる医療費増加が避けられない状況ですが、芸術療法は従来型の医療に代わる低コストの医療(代替療法)として注目されています。さらに、青少年の問題行動や不適応などへの積極的な取り組みが求められているなかで、「こころの教育」への応用も期待されています。
- 本事業の特色
芸術療法の基礎研究は国内外を問わずほとんど行われおらず、大学などの学術研究機関による積極的な研究の推進が求められています。本学は、全国に先駆けて音楽療法を取り入れた奈良市の「社会福祉協議会音楽療法推進室」と、音楽療法の効果について共同研究を行ってきました。また音楽療法関連の授業を開設し、地域の福祉施設において音楽療法の実習・実践活動を実施してきました。さらに、書道教育や美術教育において、他大学にはない極めてユニークな歴史や資源を持っています。本事業は、そうした本学の特色を生かしつつ、芸術療法の基礎分野と臨床分野が連携協力して実施する我が国初の総合的研究です。
- 事業の概要
本事業では、大学、地元自治体、地域福祉施設との連携・協力を通じ、音楽・書道・美術等の芸術活動時の心理・生理的影響を総合的に調査し、芸術療法の効果を科学的に検証すことを目指します。さらに、その成果をもとに、少子・高齢化時代のストレスマネージメントや、QOL(生活の質を高める)、「こころの教育」への臨床応用を考えていきます。
- 事業の特徴となるキーワード
芸術療法、少子・高齢化、こころの教育、生涯学習、ストレスマネージメント、QOL、地域連携、地域貢献、地域医療・福祉
- 研究グループ構成
福光 佐今 美術教育 研究事業の統括、実施計画等作成 福井 一 音楽教育 同上 脇田 宗孝 教育実践開発 美術療法の調査・研究 豊田 宗児 美術教育 書道療法の調査・研究 吉川 美恵子 美術教育 同上 前田 則子 音楽教育 音楽療法の調査・研究 川上 文雄 社会科教育 地域連携、学内連携、芸術療法の調査・研究 玉村 公二彦 教育実践開発 地域連携、芸術療法の臨床的応用に関する研究 郷間 英世 教育実践開発 芸術療法の臨床応用に関する研究 杉若 弘子 学校教育 芸術療法の臨床的応用に関する研究 辻井 啓之 保健管理センター 芸術療法の医学・生理学研究 - 事業成果(2005年度)
- 音楽療法、書道療法、美術療法の心理・生理的効果を明らか にするため、臨床実験を実施しました。各種芸術療法の効果を総合的に 検証した研究は、国内外を見ても皆無であり、学術的意義は大きいと考 えられます。今後、学会発表、論文発表、プレスリリース等を通じて、 得られた成果を公表していく予定です。
- 奈良市社会福祉協議会音楽療法推進室や複数の社会福祉施設 との共同研究を実施しています。現在、音楽療法の心理・生理的効果を 調査するために臨床実験を実施し、音楽療法の臨床モデルの構築を目指 しています。今後、得られたデータを様々な観点から分析した上で、関 係学会、論文等で成果発表を行っていく予定です。
- なお、2006年7月、本プロジェクトの研究成果の 一部が、京都で開催される「日本神経科学会」で発表されます。
- 今後の研究
今後、プロジェクトでは、大学、地元自治体、地域福祉施設との連 携・協力を通じて、音楽・書道・美術における創作や鑑賞活動を様々な 角度から調べ、芸術療法の効果を科学的に検証し、芸術療法モデルを提 言することを目指しています。そして、その少子・高齢化時代のストレ スマネージメントや、QOL(生活の質)の向上、青少年の「ここ ろの教育」への応用など、研究成果を積極的に社会に還元していきたい と考えています。
- 将来的展望
- 本事業は、芸術療法の効果を科学的に検証する我が国初の総合的研究であり、芸術療法の科学的基盤の確立および体系化に大きく寄与できます。
- 芸術療法の心身症への治療応用、「こころの教育」への応用の可能性を探るとともに、地域の社会福祉・医療政策およびサービス向上にむけた提言を行うなど、教育・福祉分野に研究成果を積極的に還元していきます。
- 我が国の伝統文化(伝統音楽、書道等)に根ざした芸術療法モデルの提言を通し、地域文化の活性化に寄与できます。