奈良絵本

 烏帽子折解説
国語教育国文学教授 真鍋昌弘  
 奈良絵本。二冊(上巻、下巻)。中巻欠。横本(タテ15.7センチ、ヨコ24.0センチ)。上巻20丁・下巻15丁。挿絵合計13頁分。上下とも表紙原装。題簽後装に書名なし。内題なし。江戸時代初期カ。幸若舞曲作品『烏帽子折』の奈良絵本化。幸若舞『烏帽子折』は室町時代成立で、上演記録としては永禄六年(言継卿記)、慶長十九年(駿府記)など。幸若系・大頭系・読み本としての寛永整版本系等に見える。本書は幸若系本文に近い。
 梗概。鞍馬山を出た牛若は金商人吉次延高に連れられ鏡の宿菊屋に泊まる。平家に追われている牛若はそこで決心して、烏帽子折を尋ねて自ら元服し、名を源九郎義経とする。翌日義経は吉次の太刀持ちとして美濃国青墓に着き、酒宴で笛の名手ぶりを発揮するが、そこで君の長から用明天皇草刈笛物語を聴かされる。その後君の長と義経が、それぞれ源義朝の妾であり子供であることを知る。義経はその夜の夢で枕上に立った義朝から、盗人が夜中に襲来してくることを知らされる。案の定やってきた熊坂長範達をことごとく斬り伏せ退治して、また奥州目差して下って行く。
 幸若舞曲作品としては、判官物の一つ。笛の巻・未来記・鞍馬出などの作品を受けて、展開した物語。謡曲『烏帽子折』との関係も今後の課題。


一覧に戻る