となつけ給き 者に出家をす ゝめて名を良弁 なしからす叡感忽に起て金鐘行 に語申き
聖武天皇も宿習む
行者又如是の前生の事をつふさ 事正教僧伝等に其例一にあらす 別縁力によりて前生を憶念する 申き隔世即忘の習ありと云とも 念して前生の事をくはしくかたり 流砂のむかしのちきりをかくれなく憶 祈請の志をとはせ給に金鐘行者 聖武天皇忽に行幸ありて国家
第四段

てたかりし事也 つふらよりいてけりあらたにめ 光の源を尋ぬれは執金剛神の 金色の光遥に皇居を照すその らにたなひく事ありけり或は又 るかに天聴に達す又時 々紫雲そ は金輪聖王天長地久と唱ふ其声は 帝城の方に向て日 々のつとめの終ことに 志ふかしそはなる石の上にのほりて の御事かりそめならす尊重の の誓願漸く胸の内にひらけて帝王 化現の執金剛神を本尊とす宿世 かの木のもとにして華厳経をよみ ないけりこの子やうやく人となりて とかおもひけんこの子をはくくみやし 大なる櫟木のうつほなる所に置ていかに 東大寺むかし深山なりし時かの鷲
第三段

志也 年うかれありくも哀なりし母の なく /\いつくをさためともなく三十余 示ていきかほを今一度見せさせ給へとて の三宝仏神ねかはくは我子のいきかたを て ゝなく /\たつねありく吾国の内 にいかにもして尋あはむと云て家をす らにも命たにいきてあらは今生の内 りくらふことはよもあらしいつくのう 金色なりけれはさりとも無代にやふ も長かるへしとおもひき鷲の形も と夢に見て侍しかは頭もかたく寿 はらみし時一人の沙門来て向て居 なし母なく /\語て 云くこの子を にきえてうせぬ母泣き悲ともかひ にかなはすして西の方を指て雲霞 とて鷲の行く方へはしり追とも終 ものともさわきかなしみて若やおとす 鷲俄に来て取て空へのほる家の内の ともいたきて庭前にをきて遊ふほとに 児の時田舎の習なれはおさなきもの □弁僧正は相模国漆部氏の人也嬰
第二段

てつくり供養せられし大伽藍也 うの権者たち心を一にし誓をあはせ □聖文殊菩提僧正は普賢大士かや □僧正は弥勒慈尊行基菩薩は □□まる 聖武天皇は救世観音良 □照機よりをこり大悲尊の方便より 瑞祥の起をかんかふれは皆是法身地 の仁祠也倩感応の源をたつね重て 実に是閻浮第一の道場日域無双 貴かりし誓願よりをこれる寺也 生れ沙門は良弁僧正と生きあはれに □□りてわたしもりは 聖武天皇と □□し衆生を利益せんと此誓願 □□と成て大伽藍をたて仏法を なさしめむ吾又おなしく彼国に生て わたしもりを祈請して一国の王位に き沙門心中に誓願すらく吾必此 法の志をあはれみて彼沙門をわたし なくして日月を送るわたしもり求 り玉門関の大河を渡とするに船賃 □として求法のために印度に向け □□□り良弁僧正又前生に沙門の □□関の大河のわたしもりにておはし □り
聖武天皇前世に流砂へ向ふ路
大伽藍建立のをこりは宿生の契によ 初まり静謐の基此地より起るへし 衰弊せむと云
々治国の運此寺より
天下興復せむ吾寺衰弊せは天下 震筆の金銅の銘曰吾寺興復せは □□百王累世に吾国を鎮 聖武天皇 □□□れり天平の宝暦に濫觴を □□はしまり諸宗弘通の叡慮 鎮護国家の霊場也四聖同心の草創 夫東大寺は 聖武天皇の御願
第一段