総合教育課程

環境教育コース

◆環境教育コースの理念と目的

 人類とそれを取り巻く環境は多くの矛盾を抱え、その基礎が揺らいでいます。2/世紀の環境問題を考える上で、自然環境と地域社会の双方の特質に関する深い理解が不可欠です。
 本コースでは、人間を主体とした社会科学的視点と人間を取り巻く白然環境を主体とした自然科学的観点からフィールドワークをとりいれつつ研究を行います。大都市圏にありながら豊かな歴史と多様な自然・社会環境を有する奈良、そしてその背後に控え豊かな自然に恵まれた紀伊半島をべースに、時間的・空間的変遷を踏まえた分析と調査を行います。
 以上の研究をつうじて、人と環境の在り方を教える環境教育現場、さらに、まちづくり、環境アセスメント、自然災害の調査・分析など直接・間接にわたしたちに関わる場において活躍するための知識と技術を身につけていきます。


コース共通科目
●地域環境概論A(地理学分野)
 人問の日常の生活空問としての地域環境について基本的な内容を、都市計画を含め講義します。
●地域環境概論B(政治学・社会学分野)
 環境をめぐる人々の価値観、環境問題に取り組む諸集団の行動過程(対立・協力)について講義します。
●自然誌概説A(生物学分野)
 生物の多様性とそれを産みだした進化のしくみについて概説します。
●自然誌概説B(地学分野)
 地球上で観察される諸現象を、地球の歴史的・空間的な背景との関連を明らかにしながら概説します。


◆地域環境専修−その目的と内容(社会科学系)

 近年の地域社会の現状をみると、経済の発展とそれに伴う都市化社会への移行により、人口過密地域が発生し、それぞれの地域で生活環境が悪化し、また地域の独自性が希薄化していることが指摘できます。この事態に直面して、豊かな生活環境を創造し、そこに住んでいることを誇りに思える地域社会を創造することに比重をおいた政策への転換が、中央と地方とを問わず求められています。
 ここで急務となるのは、住宅・公園の建設、生活廃棄物処理のシステムの確立など生活環境の整備、地域の地理的、歴史的および文化的な個性を活かした「まちづくり」、すぐれた都市景観の保存と創造、さらには地域の自然環境と都市との調和の実現、といった事柄です。
 これらの社会的な要請に応えるべく、社会科学に関する幅広い知識を持ちながら、地域の生活、文化および自然環境の問題に取り組める人を養成することが、地域環境専修の目的です。


地域環境専修担当教員
淡野 明彦 人類は生活の諸活動のために様々な形態で空問を組織化し、人為的な環境を形成してきました。しかし、今日公害問題や都市問題などが生じ、人類の生活を脅かしています。この状況に対処するために、地理学の研究手法により環境に対する適正な管理を研究します。
根田 克彦 統計の整備やコンピュータの普及により、従来のフィールドワークとは別の地域分析の考え方が登場します。地域の人口、商業活動、交通量などの統計データを収集し、統計的手法を利用してパソコンでデータを処理・分析し、地域発展の動態を把握します。
川上 文雄 「住むことに誇りを思える地域社会の創造」に関わることすべてが、地域環境問題です。環境思想は、これらを一人一人の生き方、価値観の問題として考察します。それは、所得では計り切れない「真に豊かな生活とは何か」という問いであり、近代科学/技術の再検討です
渡邉 伸一 公害・環境問題の研究課題は、大きく分けて、(1)問題の発生メカニズムの解明(加害論)、(2)被害の実態の把握(被害論)、(3)解決策の検討(解決論)、に分類することができます。こうした課題を具体的な事例に基づきながら、社会学の手法により研究します。


主な授業科目とその内容
●都市環境論  環境破壊の社会的メカニズム、社会制御としての環境管理の基礎理念を学びます。
●産業地域論  都市における小売業の分布パターンの分析事例を取り上げて講義します。
●地域社会と政治  福祉、文化、教育など広い意味での生活環境をめぐって、地域社会においてどのような政治が行われているかを考察します。
●環境社会学  公害・環境問題を、社会学(社会規範、制度、社会構造を重視する立場)の観点から、分析・検討を行います。
●地域環境政策  地域社会の創造の担い手は、地域に暮らす人々であり、地方自治体などに働く人々です。かれらの日々の活動がどのような制度的枠組みの中で、またどのような対立、協力などの過程を経て、環境政策に結実するのかを考察します。


◆自然誌専修−その目的と内容(自然科学系)

 あなたの身のまわりにいる動物や植物はどうしてそこに生きているのでしょうか?そこはその生物にとって住みやすい場所なのでしょうか?何か理由があるはずです。自然環境を考える時に大切なのは、動植物そのものや、それらが生きている場所の成り立ちや歴史を知ることです。 私たちのまわりの山や川はいつの頃からこうした姿になったのか、そのうらに隠された地質と地形の成り立ちを知れば、自然環境との付き合い方、災害への対処の仕方が見つけられるでしょう。
 奈良周辺には身近な奈良公園・春日山のほか、山深い大峯山系・大台ヶ原山系といった日本有数の多様な自然があります。自然誌専修では、そのような自然の中で自分たちの目と手と足を使ってフィールド・ワークしながら、自然環境の理解を目指します。
 身のまわりの自然環境の理解は、地球規模の環境問題への出発点です。自然誌専修では環境教育、自然環境保全、動植物の保護、自然災害への対応などの場で直接・間接に役立つ人を養成します。


自然誌専修担当教員
藤井 智康 汽水湖や沿岸海洋のように海と直結した環境において、流体地球科学的手法を用いての研究を実施するとともに、水の収支や流動の過程を考える上では地域の特性を活かした山−川−海を含めた流域を通じての一貫したフィールドにおいて研究テーマを見つけだしたい。
和田 穣隆 紀伊半島に分布する岩石のできかたについて、フィールド・ワーク、室内での岩石構造・組織の顕微鏡観察、装置を使った化学組成の分析から研究しています。研究の中心はマグマが冷えて固まった火成岩です。
松井 淳 開花・送受粉から結実にいたる植物の繁殖過程について研究しています。樹木の調査では、木に登ることもしばしばです。このほか、森林の更新過程や湿原・河辺の植生も研究の対象としています。
前田 喜四雄 自然環境教育、哺乳動物学、分類学、保全生物学
石田 正樹 原生動物を用いた細胞生物学
平賀 章三 活断層の熱ルミネッセンス年代測定
鳥居 春己 野生動物と人間との関わりの研究


主な授業科目とその内容
●地域自然誌  地域の地質を概説し、その発展史をたどり、地域の自然災害について考察します。
●野外実習A−I 7月下旬に約1週問、本学の奥吉野実習林で、林分調査と植物の分類・生態についての実習を行います。
●野外実習B−1(地学巡検)  典型的な地質構造、岩石、化石、地形などの観察できる地域へ行き、それらの露頭を実地に見学します。
●植物生態学・植物系統学  植物の生活についての理解を深め、その適応的意義について考察します。また、世代交代の様式を手がかりに陸上植物の起源と系統について学びます。
●古環境論  地球の誕生以来の大気と水と生き物の変遷をふりかえり、近い未来の地球環境を考えます。




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