総合教育課程 環境教育コース
地域環境専修/ 自然誌専修

環境教育コースの目的と履修内容

人類とそれを取り巻く環境は多くの矛盾を抱え、その基礎が揺らいでいます。21世紀の環境問題を考える上で、自然環境と地域社会の双方の特質に関する深い理解が必要です。

本コースでは、人間を主体とした社会科学的視点と人間を取り巻く自然環境を主体とした自然科学的観点からフィールドワークをとりいれつつ研究を行います。大都市圏にありながら豊かな歴史と多様な自然・環境を有する奈良、そしてその背後に控え豊かな自然に恵まれた紀伊半島をベースに、時間的・空間的変遷を踏まえた分析と調査を行います。

以上の研究をつうじて、人と環境の在り方を教える環境教育現場、さらに、生活・文化・産業・福祉など全般的な領域におけるまちづくり、環境アセスメント、自然災害の調査・分析など直接・間接にわたしたちに関わる場において活躍するための知識と技術を身につけていきます。

 

地域環境専修(社会科学系)―その目的と内容

「地域環境」といっても、何をやるのか漠然としています。授業や卒業論文ではどんなことをやっているのかを紹介して、説明をします。

入学すれば、地域環境専修の諸君には「基礎ゼミナールT」という授業があります。先生から一人一人にトピックなテーマが与えられ、そのテーマについて自分で図書館などで文献や資料を集め、何が問題になっているのかをクローズアップさせ、レポートとしてまとめます。

つぎに、その内容をみんなの前で必要図表を示しながら15分間の発表をします。テーマとしては、成田空港第二滑走路問題、狂牛病問題、国立大学の再編・統合問題、京奈和自動車道平城宮跡地下通過問題、神戸空港問題などです。あまり規模の大きな問題ではなく、われわれの日常の生活に近い問題についてです。この過程で、文献の検索の方法、レファレンス施設の利用の方法、限定された分量でのレポートのまとめ方、問題の視点を明確にした発表の方法など、研究の基礎的方法を学びます。その後、地理学、政治学、社会学、環境科学、自然誌に関する概論や、「都市環境論」、「地方行政論」、「奈良の地域研究」、「地域環境政策」などの専門科目を学びます。

卒業論文は4年間の学業の集大成として全員に課せられ、それぞれが選んだテーマで作成します。最近のテーマとしては、ペットボトルのリサイクル、奈良市のLRT(路面電車)計画、コウノトリの保護と野生化、学校ボランティア、障害児をもつ親などです。

以上の紹介で、地域環境専修の目的と内容が具体的に理解できたとおもいます。わたしたちの日常生活での身近な(その幅は広い狭いはありますが)問題を学際的な立場で考えていこうということです。

最近の卒業論文題目

「女性の就業の変化にみる西宮市における保育所の分布と変遷」
「電話帳広告の道案内図を用いた都市イメージの分析」
「大阪市帝塚山地域姫松通りにおける小売業立地の変容」
「大阪における都市風景に関する考察―絵葉書の分析よりー」
「奈良県高市郡明日香村の観光農園事業におけるグリーン・ツーリズムの可能性」
「文学作品からみた奈良の場所イメージ」
「薬害HIV被害者の意味世界の諸相」
「アートのバリアフリー化」
「奈良における新しい祭りの可能性―バサラ祭りを事例として―」
「地域の子ども会で望まれる保護者の関わり方」
「奈良公園周辺における観光産業に関する考察」

地域環境専修担当教員
淡野 明彦 教授 居住環境のアセスメント、観光・レクリエーション空間の整備
川上 文雄 教授 地域創造への市民参加の研究
根田 克彦 教授 都市内小売業地域の分化
渡邉 伸一 准教授 公害・環境問題を中心とする社会学的研究

 

自然誌専修(自然科学系)―その目的と内容

我々が住む21世紀の地球は、地球温暖化・生物多様性の減少・水資源の枯渇など、様々な地球環境問題を抱えています。これらを理解・解決するためには、物を細分化して見る見方(虫の眼)だけではなく、物を大きな視野から広く見る見方(鳥の眼)や、そこにある現象の過去・歴史・履歴を長い時間スケールで見る見方(化石の眼)の獲得が重要です。つまり、生物とそれを取り巻く地球環境を知る上で重要なことは、動植物そのものや自然現象を細かく観察するとともに(虫の眼)、「木を見て森を見ず」に陥らないような広い視点にたって自然現象を理解し(鳥の眼)、動植物が生きている場所の成り立ち・歴史を知ることです(化石の眼)。我々はこれらの物の見方を重視し、生物と地球の環境を見つめていきます。

奈良周辺には身近な奈良公園や、ユネスコの世界遺産に指定された春日山原生林のほか、山深い大峯山系・大台ケ原山系といった日本有数の多様な自然があります。自然誌専修では、そのような自然の中で、自分たちの手と足を使ってフィールドワークをしながら、自然環境の理解を目指します。

身のまわりの自然環境の理解は、地球規模の環境問題への出発点です。自然誌専修では環境教育、自然環境保全、動植物の保護、自然災害への対応などの場で直接・間接に役立つ人を養成します。さあ皆さん、生物と地球の環境について、いっしょに学びましょう。

最近の卒業論文題目

「春日山に生息するシカのライトセンサスによる生息数・出現場所の季節的変化」
「ミズクラゲのストロビレーションに対する栄養状態および水温の影響に関する研究」
「奈良公園におけるイノシシ(Sus scrofa leucomystax)の食性」
「岡山県日生沖におけるアマモ場の物理環境」
「ゾウリムシ大核内微小管に関する研究」
「ダム放流水が下流河川に及ぼす影響」
「木津川砂州におけるヤナギ個体群数の樹齢構成」
「森林河川の水質特性〜酸性雨に関連して〜」
「大峯山脈・前鬼の天然林の現況」
「岡山県日生におけるアマモ場の緩衝作用および水質特性」

自然誌専修担当教員
松井 淳  教授 木本植物の繁殖生態・湿原の保全生態学
藤井 智康 准教授 陸水物理学・水圏環境科学 湖沼における湖水の流動特性の研究
和田 穣隆 准教授 野外地質調査と室内試料解析による火山活動の研究
石田 正樹 准教授 (生物)細胞生物学
菊地 淳一 准教授 (生物)菌類生態学
平賀 章三 教授 (地学)地質学
前田 喜四雄  教授 自然における動植物及び自然環境教育に関する研究
鳥居 春己  准教授 野生動物と人間との関わりの研究

 


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