手作り絵本の楽しさ(梶田 幸恵 著) -奈良教育大学 出版会-
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21幼児が描いた○△□だいじです。そのためには毛筆の線を生かすと効果的です。消すことができない毛筆の線で絵を描くなど無謀なことといわれますが、緊張して集中して描くと思いがけない生命力のあふれた絵になります。毛筆の面白さは[四・折れ本型絵本を作る]で紹介します。詳しいことは拙著『毛筆のよさを生かす美術教育』(明治図書出版)をご参照ください。毛筆の線で描くといままで知らなかった自分の表現力を発見することができます。 幼い子どもが描く絵は、かたちのバランスがとれていなくとも力強い線でぐいぐい思いきって描いているから、生きて動いている感じがします。大人も絵本の絵は、うまく描こうとするのではなく、線を生かして強調したいところは大胆にデフォルメをしてみるとおもしろいものになります。    ぐちゃぐちゃになぐり描きをしていた幼児が意識して○△□を描くようになると、人間も動物も自分が興味をもつところの特徴をとらえて描くようになります。たとえば、「ぞうさん」を描く時、小さい○は頭、大きな○は胴体、胴体の下に□を四つ描くと足、耳は△、鼻は長くて細い□、というように、○△□を組み合わせていろいろなものを思い浮かべて簡単に描くようになります。 浮世絵で有名な葛飾北斎はいまから百数十年前、江戸時代末期に、誰で

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