手作り絵本の楽しさ(梶田 幸恵 著) -奈良教育大学 出版会-
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33ることを気づかせ、時には動いている人物の略画を黒板に描いて見せたそうです。そうすると生徒は描く手がかりを掴み、毛筆を使いはじめると集中してぐいぐい描き進めました。いままで鉛筆で下絵を描く時とちがって、毛筆は描き直しができないので思いのほか短時間で線描きをしました。 さらに、赤・黄・青の三原色だけ絵具を出し、混色して墨線の上から彩色すると、色が濁らず、楽しみながら美しい彩色ができたそうです。いままで絵を描くことが苦手だった生徒も、力強い毛筆の線で多くの人物を描き、修学旅行の思い出を描くことができた達成感で満足しました。 わたしは中学三年生の生徒全員が質の高い絵巻を描いたことに感動しました。そこで百二十六点全作品を借りて、奈良教育大学の教育資料館で開催中の大学生の二十歳の自叙伝絵巻と一緒に展示しました。中学生が一筆一筆こころを込め真剣に描いた絵巻のすばらしさに、大学生も地域の方々もたいへん驚きました。

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