手作り絵本の楽しさ(梶田 幸恵 著) -奈良教育大学 出版会-
5/73

12701年 光明子が生まれる手作り絵本『光明皇后』(表紙)はじめに わたしが手作り絵本にはじめて興味をもったのは、神戸で小学校の教師をしていた時です。今から四十年ほど前のことです。少ない給料の中から学級文庫のために絵本を買い、給食の準備時間を使って子どもたちに読みました。給食係りの子どももアルミ食器の音を立てないように、絵本に興味をもって耳を澄ませながら配膳をしていました。 そのうち、漫画風ですが鉛筆で絵を描き、短い言葉をそえ、ホッチキスでとめた簡単な絵本を作る子どもがでてきました。たちまち、人気がでてひろまり、子どもの手作り絵本を学級文庫の絵本と一緒に並べ、貸し借りをするようになりました。手作り絵本のヒントを得るために、子どもは市販の絵本を繰り返しよく読むようになりました。 附属小学校の図工専科教員になってからは、六年生の卒業記念として修学旅行や小学校生活の「思い出絵巻」を毛筆で描き、折れ本型の絵本を作りました。その絵本を長く保存できるように、文箱を作り、木彫の学習もしました。 子どもたちが絵本を作るようすを見て、わたしも絵本を作りたくなりました。しかし、物語を自分で考えようとしても、子どものようにすぐに思いつきません。

元のページ 

10秒後に元のページに移動します

※このページを正しく表示するにはFlashPlayer10.2以上が必要です