手作り絵本の楽しさ(梶田 幸恵 著) -奈良教育大学 出版会-
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13男の赤ちゃんが死ぬたまたま、岩波少年文庫『古事記物語』(福永武彦作 昭和三十二年発行)が手元にあったので、古事記にでてくる女の人に焦点を当てて木版画絵本を作ることにしました。福永氏の文章をそのまま絵本に書くには文章が長すぎ、子どもにわかるように友人と相談して文章を短く書き換えました。 当時、神戸新聞社が「赤とんぼ絵本コンクール」を開催したので『古事記物語 さほ姫』を出品して受賞しました。また、大谷美術館が絵本原画コンクールを開催し、『インドの民話 クリシナ物語』を出品して受賞しました。 このあと、宮城教育大学に転任して、自主ゼミで学生たちと一緒に飛び出す絵本の教材研究をしました。紙工作の教材として飛び出す絵本は最適です。場面構成と飛び出す仕組みを考え、色画用紙の配色を考えるなど、描画と工作、デザインなどの創造的なアイディアを練ることができました。教育実習先では学生以上に子どもが興味をもち、いろいろな工夫をしました。学生たちは多くの人たちに飛び出す絵本を見てもらおうと展覧会を開き好評でした。その頃は手作り絵本に関する資料も本も見つからず、ハードカバーの製本のしかたがわかりませんでした。試行錯誤して作り、展示中に絵本が壊れ修理するのがたいへんでした。 十三年前に奈良教育大学へ転任してすぐ、学生が絵本のことを研究して卒業論文に取り組みたいと相談に来ました。ちょうど奈良市立中央図書館で「手作光明子が皇太子(後の聖武天皇)と結婚する

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