手作り絵本の楽しさ(梶田 幸恵 著) -奈良教育大学 出版会-
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16奈良絵本『烏帽子折』『熊野の本地』 日本では綴じるかたちの絵本よりも早く、巻物に絵や文章を描く「絵巻物」が発展しました。絵巻物は十世紀平安時代や鎌倉時代に盛んに作られ、絵巻の内容はお経の絵解き、偉いお坊さんの伝記、お寺や寺院の縁起、源氏物語の挿絵などでした。 代表的な絵巻は『信貴山縁起絵巻』・『鳥獣戯画』・『源氏物語絵巻』・『伴大納言絵巻』など数々の国宝の絵巻があります。この絵巻の伝統が十五世紀以降、御伽草子に引き継がれて、『奈良絵本』をはじめとした絵草子がたくさん作られるようになりました。 奈良絵は東大寺や興福寺などの絵仏師が描きはじめ、後に京都の町絵師も描くようになりました。和紙に岩絵具や顔彩などで美しい絵を描き、金泥や銀泥を用いた華やかな絵本です。子どもに見せるためというよりも「嫁入り本」とか「棚飾り本」として作られ、高価なもので庶民の手の届かない絵本でした。 奈良教育大学が所蔵する『奈良絵本』の実物は特別許可を申請しなければ見ることができませんが、元学長・赤井達郎名誉教授の解説文と図録写真をインターネットで自由に見ることができます。(アクセス先は、奈良教育大学教育資料館ホームページ「奈良絵本画像データ」)

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