日本の唱歌と太平洋の賛美歌(安田 寛 著) -奈良教育大学 出版会-
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18う、と率直に思ってしまうのですが。 確かにおっしゃる通りです。でもまあ、研究というのは大抵そういうものだろうと思うんですけど、パッと見た時には今更研究するほどのものでもないという感じが起こると思うんですね。癌の特効薬の研究とかだと説明しなくてもその意義はすぐに分かってもらえますが、唱歌の研究ではそうもいきません。そういう意味ではとても地味な研究です。 まあ、それでも頑張って、力を込めて言えば(笑い)、唱歌は明治に生まれた新しい歌だし、学校教育で大きな働きをした歌であると同時に、明治から日本の音楽が、それまでのいわゆる日本の伝統音楽からしだいに西洋音楽に変わっていった時に大きな力を発揮した歌と考えられますので、少なくともその歴史は音楽教育の歴史にとっても重要ですし、日本の明治以降の音楽の歴史にとっても重要ですから、そういう意味では唱歌の歴史といったものを調べる価値はあると思うのですね。ーなるほど、唱歌の歴史を調べるということですね。そしてその歴史は私たちの音楽の歴史にとって大事だと。 そうです。唱歌の歴史が分からないと、私たちの音楽の歴史や、それと関係している音楽教育の歴史も分かりません。昔ですね、日本に来た宣教師が、日本人が讃美歌を歌うのを喜んで「すると彼らは新しい歌を歌った」と言いました。これは聖書にある言葉なのですが、讃美歌と同じように唱歌も明治になって日本人が歌いは宣教師のお墓(左)とそれに刻まれた 「And they sing a new song(すると彼らは新しい歌をうたった)」(上)

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