日本の唱歌と太平洋の賛美歌(安田 寛 著) -奈良教育大学 出版会-
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27ロネシアの島々に行った時、どこに行っても聞こえてくるのは讃美歌ばかりだったのです。でもそれは彼の研究対象ではないわけです。彼にとっては讃美歌というのは自分が知りたい音楽、つまりミクロネシアの島々に昔からあった音楽、すなわち讃美歌が伝わる前にあった音楽を消してしまうものだったのです。ですから、自分の研究の邪魔になる音楽、恐らくそんなふうに思ったでしょうね。少なくとも彼の研究対象にはなっていません。 ですから私のやっている研究は民族音楽の研究でもないわけです。そのように言うことはあまり好きではありませんが、新しい研究と言うしかないかもしれません。あるいはインターディシプリン(interdiscipline)という言葉があるんですが、学際的と訳しますが、ディシプリンというのは学問の領域のことです。インターはインターナショナルとかのインターですね。かみ砕いて言えば、学問の垣根を越えた学問、学問の垣根をまたぐ学問、ということです。私の研究は、音楽を対象とする様々な研究の垣根を越えた研究、そんな風にしか言えないのではないでしょうか。§7 「蝶々」の場合ーなるほど、学問の垣根を越えた新しい音楽研究ということですね。 でもあまりそのことは強調しないようにしています。教育大学にいる研究者です唱歌「蝶々」(『小学唱歌集 初編』1882年第17)の楽譜 出典:文部省音楽取調掛編『小学唱歌集 初編』(文部省、1881年) / 国立国会図書館所蔵

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