日本の唱歌と太平洋の賛美歌(安田 寛 著) -奈良教育大学 出版会-
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28からね、音楽教育史の新しい研究、という説明にしておきます。ーでは、話を元に戻しますが、唱歌誕生が奇跡だったとします。例をあげてそのことをもう少し具体的にお話しいただけると分かりやすいと思います。 そうですね、私がこのことを説明する時よく使っている唱歌があります。年配の方も若い方も同じようにご存知の「蝶々」という唱歌です。「蝶々、蝶々、菜の葉にとまれ」という歌です。日本でも百年近く歌われている歌です。 この古い歌をアジア太平洋全体の中で眺めてみます。日本の蝶々はアメリカから入ってきたわけですが、実はこの同じ歌がミクロネシアの島には讃美歌として入ってきています。時期も日本に入ってきたのとほぼ同じです。西暦で言いますと一八七〇年代です。ーそうなんですか。日本に入ってきたのと同マーシャルの讃美歌集「Buk in al kab tun ko」(1891年)に出てくる「蝶々」の旋律出典:Buk in al kab tun ko n o n ro dri aili[n in Marshall [microform](1891) New York: Dri jeje im ko mo ne The Biglow & Main Co., 1891. / Bishop Museum所蔵

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