日本の唱歌と太平洋の賛美歌(安田 寛 著) -奈良教育大学 出版会-
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31な例で言いますと、今は「蛍の光」という題名で知られている唱歌ですが、これは『小学唱歌集』初編では「蛍」という題でした。この旋律はスコットランド民謡でもあるのですが、当時はむしろ讃美歌として広く流布していた旋律でもあったのです。 「蛍の光」を太平洋の当時の讃美歌との関係で見てみますと、南太平洋のクック諸島では一八五三年に出版された讃美歌集にこの旋律を使った讃美歌が出てきます。一八五三年は日本で言えば嘉永六年で、ペリーが浦賀に来た年ですね。一八八四年のクック諸島の讃美歌集にも出てきます。一八八四年は明治十七年ですから、『小学唱歌集』第三編が出た年ですね。この頃には遠く離れたクック諸島と日本で同じ旋律が歌われていたのです。ハワイではクック諸島よりもっと早く一八四四年に出た讃美歌集にこの旋律が出てきます。 ミクロネシアを見てみますと、一八五七年に出版されたポナペ島の讃美歌集にこの旋律が出てきます。日本では一八八二年に出版された讃美歌集と、それと同じ年に出た『小学唱歌集』初編にこの旋律が出てきます。韓国では一八九六年に出版された唱歌集に出てきます。年讃美歌年讃美歌年讃美歌年讃美歌唱歌年讃美歌唱歌1834ハワイ1850ハワイ18661882日本日本1898183518511867188318991836185218681884190018371853クック1869クック188519011838185418701886190218391855クック187118871903184018561872クック1888190418411857ポナペ187318891905韓国18421858187418901843185918751891ポナペ1844ハワイ186018761892184518611877189318461862ハワイ1878189418471863187918951848186418801896韓国184918651881クック1897「蛍の光」(讃美歌曲名「Auld Lang Syne」) 出現年

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