日本の唱歌と太平洋の賛美歌(安田 寛 著) -奈良教育大学 出版会-
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46ーそれは分かります。でも生まれたばかりの宗教と、それから何百年も経った十九世紀では意味が違うと思うのです。私が教えて欲しいと思うことは、彼らをそこまで駆り立てた情熱、簡単に言ってしまえば信仰の力なのでしょうが、それだけでは納得出来ませんよね。そこまで彼らを駆り立てた何か原動力、今の言葉で言えばモチベーションが何だったのか。その辺りを私たちがなるほどと実感出来るような材料はないのでしょうか。 そうですね、私の個人的な体験で言いますと、ある本を読んだ時少し納得がいきました。こういうことだったんだ、と納得がいきました。それをお話しする前にですね、キリスト教海外伝道というのはイギリスでは十八世紀後半に起こってきますし、アメリカでは少し遅れて十九世紀はじめに起こってきますが、そうした運動は例えばアメリカの例で言いますと、宗教に対して非常に保守的、古い考え方を頑固に保とうとしている人たちが行った運動だということを、まず頭に入れておいて下さい。 十九世紀というのはご存知のように科学がどんどん発達していきますし、産業も発展し、資本主義社会がどんどん成長します。それを背景に宗教色は社会からどんどん薄れてきた時代です。そういう時期に危機感を覚えて、このままではいけない、キリスト教をもっと盛んにしよう、本来の形を守らなければいけないと考えた保守的な人たちがはじめた運動だったのです。

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