日本の唱歌と太平洋の賛美歌(安田 寛 著) -奈良教育大学 出版会-
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49§14 アンドリュウ 今からちょっとその場面を紹介しますが、印象的なのはアンドリュウはまだ十六歳の少年なのですが、もしかしたら自分は将来海外に行って宣教師になるのではないかという気持ちがふと芽生えた時に、怖くなったと言います。宣教師になるという考えに捕らわれるのは「怖い」ことだったのです。その「恐怖」の件をまず紹介します。 「けれども恐怖はアンドリウの心を襲った。もし神様が自分を招き給うたならば? 急に口のなかが乾いて、食物が咽を通らなくなった」(深澤正策訳『戦える使徒』ダヴィッド社 一九五二年 以下、引用はすべて同じ) 宣教師になることは、自分の意思ではなく、「神様が招き給う」ことだったのです。ですから、招かれたらどうしよう、招かれたくない、という気持ちがあったことが分かります。実際彼はこの後、大学を出て神学校に進学し、志願して中国伝道に出かけることになるのですが、その自分の運命といいますか、その予感を感じた時の気持ちが怖かった、というのです。ここのところが私にとってはとても印象的でした。恐怖という感情は人間的だし、それなら分かるな、と思いました。それで、この恐

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