日本の唱歌と太平洋の賛美歌(安田 寛 著) -奈良教育大学 出版会-
43/73

50怖の件にいたる一節を少し長いですが読んで見ます。  「彼が海外伝道に神から招かれたというのは、次のような事情である。 そのとき、中国から戻ってきた宣教師がウエスト・ヴァジニア州ルイスバーグの教会で、中国においての体験談を語った。十六歳だったアンドリウは、家族のものと一緒に前列の椅子に腰をかけて、中国伝道の危険と困難と、そうして絶望的な民衆にたいする福音の必要に耳を傾けた。しかし、聞いているうちに彼は恐ろしくなった。宣教師の顔を避けるつもりで、自分だけ先に急いで家に戻ったほど恐怖の念に打たれた。ところが彼の父が、その背の高い、痩せて凄い宣教師を晩の食事に招待して連れてきたので、彼も避けてばかりいるわけにはいかない。その食事の席上でずらりと顔をならべている男の子たちを眺めた宣教師は、彼の父に言った。 『こんなに子供さんが居なさるのじゃから、一人ぐらい、中国を救うために、ささげられてはどうじゃな』 誰も答えない。子供等の父は、すっかり驚いた。一年に一度か二度、海外から帰った宣教師の説教を聞く、晩食を御馳走する、それから馬車で次の教会まで送り届けるのは、甚宜しい。しかし、その宣教師に子供をやるのは、問題が違う」 この後、先ほど紹介した「けれども恐怖はアンドリウの心を襲った」が出てきます。

元のページ 

10秒後に元のページに移動します

※このページを正しく表示するにはFlashPlayer10.2以上が必要です