日本の唱歌と太平洋の賛美歌(安田 寛 著) -奈良教育大学 出版会-
44/73

51この例から分かるもう一つのことは、外国宣教師という職業は、まっとうな両親にとってはなって欲しくない職業であったということです。若い息子が若さゆえの理想に燃えて宣教師になることはあって欲しくないことだったのです。 中国から帰国した宣教師の提案があった後、母親はこう言っています。 「食卓の一端に居る母親は、きっぱりと云った。 『そのことを子供たちの頭に入れたくありません』 宣教師は落着き払って居る。 『神様が招き給う』」  兵隊にとられることは徴兵制度があれば避け難いことですが、宣教師にとられるということも「神様が招き給う」のですから、場合によっては法律以上に逃れ難いことでもあったのでしょう。まあ、時代精神とでも言う他はありません。ー当時、アメリカに広まっていた時代精神によって宣教師になるというお話でしたが、アンドリュウが実際中国に渡った時、彼の行動を支えていた気持ちは何だったのでしょう。 先ほど伝道の根拠となったマタイの一節を紹介しましたが、伝道という行動を支えている目的もマタイにあります。「御国のこの福音はあらゆる民への証しとして、

元のページ 

10秒後に元のページに移動します

※このページを正しく表示するにはFlashPlayer10.2以上が必要です