日本の唱歌と太平洋の賛美歌(安田 寛 著) -奈良教育大学 出版会-
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59 どういう強制があるかと言うと、例えば古い歌や踊りを続けていると、信仰が足りないということで教会の仲間、コミュニティーから追い出します。追放、破門ですね。それ以前には、古い歌や踊りをしているとあなたは地獄に落ちるというようなことも言ったでしょうしね。島中がクリスチャンになっていると、自分が破門されるとその社会で生きていけなくなるので、破門はある時期から強い強制力として働いていきます。ー今、先生はキリスト教の宣教師たちは古い歌舞を禁止していった、そういう事実があるんだと指摘されましたが、もう少しいくつか具体例をあげて下さると分かりやすいと思いますが。 そうですね、例えばこんな例があります。昭和九年にある民族音楽学者がミクロネシアに音楽の調査に出かけました。田辺尚雄という学者です。彼がミクロネシアに行って目の当たりにしたのはどこもかしこも讃美歌だらけなのです。彼は讃美歌によって在来の音楽がなくなってしまったのではないかととても心配しました。幸いなことにいくつか残っていました。ただしそこには問題があって、在来の歌舞をやらせるということに現地の人々の間には強い抵抗がありました。王妃ケオプラニの伝統の葬式出典:American Board of Commissioners for Foreign Missions. Paper (Primary Source Media / Cengage Learning)

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