日本の唱歌と太平洋の賛美歌(安田 寛 著) -奈良教育大学 出版会-
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76な形で変化が続いているのか、そういうのを見てみたいです。 ですから、まだまだいろんな地域、太平洋の島々の現地調査も必要ですし、それに関する資料、文献、讃美歌集を集めていかなければなりません。私自身、元気に研究が出来る時間が残りどれくらいあるのかそろそろ考える年齢なのですが、その時間で果たして終わるのかどうか、実はその心配が出てきました。少なくとも私自身にはとても面白いことなので、体力が続く限りやっていきたいです。これがある程度一段落し、全体像が見えた時に、改めて日本の唱歌、あるいは唱歌をはじめとした私たち日本の歌、さらに日本の音楽が(明治以降の日本の音楽が)何であったのか、全く新しい面が見えてくるのだろうとそれを期待しているわけです。 近代の日本の歌の歴史というのは、日本人である保証を絶えず危険に曝しながら歩んできた道だと思います。それは破壊と再生の道でもあったのです。「日本を太平洋全域の諸文化の歴史の中に位置づける」という考えがあります。同じように私も日本の近代音楽を太平洋全域の音楽文化の歴史の中に位置づけたいと思っています。 新しい音楽教育史もこの中に含まれ、その歴史は近代の日本音楽教育の意味とこれからの方向を示唆してくれるだろうと思います。―壮大な構想だと思いますけれども、是非ともそれを達成されて、私たちがその成果を見ることの出来る日が近いことを期待しています。本日はどうもありがとうございました。

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