日本の唱歌と太平洋の賛美歌(安田 寛 著) -奈良教育大学 出版会-
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78の場限りの音楽だったのでしょう。 高校生が近頃聴く音楽は私たちの頃のものとは全く違いますが、構造といいますか、与えられた音楽環境があって、その音楽を聴く、という構造には変化がないのではないでしょうか。僕たちの頃はまだレコードの時代でしたが、今は、アイポッドとか携帯電話に代表されるようにとても簡単に音楽を自分で持つ時代になりました。それだけに、アメリカを中心とした欧米の音楽、あるいはそれを模倣した日本で作られた音楽があって、ただそれを聞き流すという構造はそのままで、しかも聞き流す勢いははるかに増していると感じられます。 最初に言いましたように、高校生では音楽を日本人との関係で考えるというような動機はまだ生まれないと思いますが、出来たら僕が気がついたよりももう少し早く、こういう問題があるんだということに何人かには気がついて欲しいですね。こういう問題をきちんと解決しないでは、本当は自分たちの音楽生活が豊かにならない。高校生に限らず、大学生も含めて若い人たちに読んでもらって、自分たちが聴いている音楽って、何か一筋縄ではいかない、解決しなければいけない問題を実は抱えているんだ、こういう認識に少しでも早く到達して欲しい、そんな風に思っています。 最後になりましたがオセアニアの讃美歌集の研究に協力してくれたハワイ大学音楽学部民族音楽学教授ジェーン・ムーラン博士とハワイ大学ハミルトン図書館パシフィックコレクション・キューレータのカレン・ピーコック博士への感謝を記したいと思います。

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