日本の唱歌と太平洋の賛美歌(安田 寛 著) -奈良教育大学 出版会-
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16となのですが。 はっきり違うものですが、説明するとなると案外難しいですね。まず、生い立ちに違いがあります。唱歌というのは明治政府が学校で音楽の授業をする時に必要になった歌のことですが、これに対して大正時代になって、その唱歌が子どもの生活感とあまりにもかけ離れているといった批判から生まれた、新しく創作された子どもの歌が童謡です。ですから、最初は唱歌と童謡は対立関係にあり、学校では童謡を歌わせないようにして、歌うと叱られたようです。ーなるほど。童謡は学校で歌うと叱られる歌だったのですか。 そうです。唱歌は反対にほめられる歌だったということですね。歴史的にはぜんぜん違うものですが、歌った感じで区別するのは、普通にはちょっと難しいと思います。「夕焼け小焼け」という歌がありますね。あれはどっちか分かりますか。ーさあ、どっちでしょう。童謡ですか? はい、正解です。作曲者が童謡として作曲した歌だ、と知らなければ区別がつかないでしょうね。大正時代以降、唱歌も童謡も平行して作られますし、今歌われている唱歌はすべて童謡も作られていた時代に作られた唱歌ですね。ですから、研究者でなければ、あまり気になさらなくてよいと思いますし、必要な時は、事典かなにかで調べるか、専門家にお聞きになることですね。ーなるほど、専門家でなければ区別出来ない、ということですね。これで私もやっ『赤い鳥』創刊号(大正7年)表紙国立国会図書館所蔵

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