どんな情報が記憶に残るのか? -記憶を促す情報のタイプ-(豊田 弘司 著) -奈良教育大学 出版会-
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- 3 - 意味的限定性 記銘語(「ながい」)を憶える場合を考えてみましょう。以下のような2つの文を考えてください。 「きりん の くび は ながい。」 「かれ の かみ は ながい。」 この2つの文を与えられた場合、どちらが「ながい」を想いだす可能性が高いでしょうか。予想できると思いますが、前者の文が後者の文よりも想いだす割合は高くなります。「ながい」という記銘語の連想語である「みじかい」を交換して、「きりん の くび は」という文の中に入れると意味がおかしくなります。ですから、この文は、記銘語と連想語が交換できない文ということになります。一方、「かれ の かみ は」という文の場合では、記銘語(「ながい」)と連想語(「みじかい」)を交換しても、意味がおかしくなることはありません。ですから、交換可能文になります。交換可能文よりも交換不可能文の方が記銘語(「ながい」)の意味をより限定しているのです。限定している方が記銘語を想いだしやすくなるわけです。ですから、情報のもつ意味的限定性が重要なのです。 奇異イメージ 記銘語(「あかちゃん」)に対して、以下のような2つの文を考えてください。 「あかちゃん が ミルク をのんでいます。」(普通イメージ文) 「あかちゃん が ビール を のんでいます。」(奇異イメージ文) 前者の普通イメージ文では、普通に考えられる状況を示しています。一方、後者の奇異イメージ文の場合には、普通では考えられないような状況が示されています。しかし、これがかえって記銘語を想いだす手がかりとなるのです。このように普通イメージ文よりも奇異イメージ文の方が想いだす可能性が高い

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