どんな情報が記憶に残るのか? -記憶を促す情報のタイプ-(豊田 弘司 著) -奈良教育大学 出版会-
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- 4 - 現象を、奇異性効果あるいは奇異イメージ効果と呼んでいます。特に、状況をイメージする能力の高い人は、奇異イメージ文によって示された状況を鮮明なイメージとして描くことができますので、奇異イメージ効果の大きいことが示されています。ですから、情報のもつ奇異イメージも重要なのです。 統合の促進 記銘語(「ねえさん」)に対して、以下のような2つの文を考えてください。 「ねえさん は にいさん と なかよし です。」 「ねえさん は わたし と なかよし です。」 前者の文では、「ねえさん」からの連想語である「にいさん」が文の中に含まれています。一方、後者の文では、「ねえさん」からの連想語は含まれていません。記銘語からの連想語が含まれている文が与えられる場合が、含まれない文が与えられる場合よりも記銘語を想いだす可能性が増えるのです。これは、記銘語からの連想語が文の中に含まれていることで、記銘語が文の中へうまくフィットして、頭の中に入りやすいと考えられています。このように、頭へ情報が入ることを統合と言うので、統合を促す情報が重要であるということになります。 過去のエピソード 記銘語から自由に過去の個人的なエピソードを想起してもらいます。例えば、「幸福」という記銘語であれば、過去にいった家族旅行での楽しい出来事を想いだすかもしれません。また、「戦争」という記銘語であれば、ニュースで報道された海外での惨状を想起することもあるでしょう。しかし、記銘語から過去のエピソードが全く想起されない場合もあります。記銘語から過去のエピソードが想起された場合は、想起されない場合よりも、その記銘語を想いだす可能性が高まります。これは、記銘語に対して、過去のエピソードが付加されたことになり、過去のエピソードが検索手がかりとなるからです。このように、過去のエピソードを記銘語に付加することを自伝的精緻化(autobiographical

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