どんな情報が記憶に残るのか? -記憶を促す情報のタイプ-(豊田 弘司 著) -奈良教育大学 出版会-
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- 6 - もらう場合を比較する実験をしてみました。例えば、記銘語(「氷」)から人物を想起するように求められると、「浅田真央さん」を想起する人もいるでしょう。同じく、単語(言葉)を想起するように求められると「冬」を想起する人もいるでしょう。どのような人物、単語でもいいのですが、人物を想起した場合と単語を想起した場合とで比較すると、記銘語が想いだされる確率は、人物を想起した場合が明らかに高かったのです。このように、人物情報は、検索手がかりとして有効であるといえます。 では、何故、人物情報が検索手がかりとして有効なのでしょうか。それは、個々の人物が他の人物とは異なる特徴を持っているので、目立ちやすいということが関係しています。要するに、目立ちやすい情報は、手がかりとして有効であるということです。 差異性(distinctiveness) 人物情報が目立ちやすいので効果的であるというように説明しましたが、心理学では、ある情報が他の情報と区別できて、際だっている、目立っているというような特徴を、差異性あるいは示差性といいます。人物情報だけでなく、奇異イメージにしても差異性は高いですし、快や不快な感情が伴う過去のエピソードも差異性が高いといえます。これまで、説明してきた記憶に残りやすい情報は、まとめてみると、頭の中にある他の情報との区別がはっきりしていて、差異性が高い情報ということになるわけです。ですから、わたしたちが、ある特定の情報を記憶に残そうとする場合は、その情報が他の情報と区別でき、他の情報よりも目立つような工夫をする必要があるのです。詳しくは、大学にて、具体的な実験内容も一緒に、学習しましょう。大学にて、会えるのを楽しみにしています。

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