物質をつくってはかる(梶原 篤 著) -奈良教育大学 出版会-
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- 8 - ビのような甲殻類の血液の中に含まれる銅イオン(Cu2+)が観測されますし、緑茶の茶葉や抹茶を測定すると植物に含まれるマンガンイオン(Mn2+)が観測されます。身の回りの自然に存在する様々な化学種を検出して比較、考察することにより、自然の成り立ちや状況に関する理解が深まるとともに、卒業後に教員になってからも続けられるような研究の手掛かりをつかむこともできます。このような測定をするには、何よりも好奇心が必要で、危険でなければどのような測定をしてもかまいません。ミツバチやアリをそのまま試料管に入れて測定したこともあります。 5.おわりに 奈良教育大学の私の研究室で行っている研究内容の一部を紹介してきました。化学の研究は物質をつくる研究と物質をはかる研究の2種類に大きく分けることができますが、両方組み合わせるといろいろなことがより深くわかるので、つくってはかる研究を主に行っています。ここでは詳しく述べませんでしたが、合成が好きな学生は制御ラジカル重合などの手法を用いて、物質を合成し、それからラジカルを発生させて測定するといった研究もしています。 化学は変化を調べる学問なので、化学反応の真っ最中の様子を調べることは化学反応を理解するうえで不可欠で、その結果からさまざまな情報が得られます。化学反応をこのようにごく基礎的な部分から理解することは化学、そして理科の深い理解につながり、将来理科の教員として教える立場になった時の学生に役に立つものと考えています。

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