物質をつくってはかる(梶原 篤 著) -奈良教育大学 出版会-
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- 2 - 2.化学反応の観測からわかること 図2は、図1のメタクリル酸エステルでRがメチル基のメタクリル酸メチル(Methyl methacrylate, MMA)をモノマーとしたラジカル重合反応をESRで直接観測した際に得られるスペクトルです。MMAとごく少量のラジカル重合開始剤を溶媒に溶かして試料管に入れ、60℃に加温して超高圧水銀灯からの紫外線を照射すると、試料管の中でラジカル重合が進行し、このようなスペクトルが得られます。ESRのくわしい原理については大学入学以降に学びますので、ここではこのスペクトルを例に、ESRスペクトルから得られる情報を紹介します。横軸は磁場で、縦軸は信号強度です。ESR信号はマイクロ波の吸収の形で観測され、その後、分解能を向上する操作を加えて観測するので、スペクトルは図2に示すように微分型で観測されます。このスペクトル線はラジカルの近傍に核スピンをもつ核種があるとその影響を受けて分裂します。この分裂様式と分裂幅とからラジカルの周辺の構造についての知見が得られます。 -2000-1500-1000-5000500100015002000330335340345B2 mT CCCOOCH3CH3HH 図 1 メタクリル酸メチル(MMA)のラジカル重合をESRで観測した際に得られる成長ラジカルのスペクトル(上)とこのスペクトルを解析してわかる成長ラジカルの構造(下)

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