物質をつくってはかる(梶原 篤 著) -奈良教育大学 出版会-
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- 5 - 断してラジカルを発生させます。このラジカルが最初の原料を攻撃する反応を観察することができます。観察できる時間は最大でも4μ秒(1秒の100万分の4)程度と非常に短いのですが、その間にラジカルが生成して次の反応を起こすところまでが観測できます。原理も実験方法も高校の化学や物理の範囲を超えていますので、ここでは結果とその見方を説明します。 図4を見てください。これが時間分解ESRで観測する化学反応です。ラジカル重合が始まってこれから成長を始める最初のラジカル付加が起こる反応です。上の段は開始剤が光によって開裂してラジカルを発生させる反応です。ここで発生したリン中心ラジカルと炭素中心ラジカルのうち、リン中心ラジカルのほうが反応性が高いのでより速くメタクリル酸tertブチルに付加します。その反応が下段です。こうしてできた連鎖開始ラジカル(Chain initiating radical)はその後、つぎつぎとtBMAに付加して長い鎖のような成長ラジカルになっていきますが、この方法ではその部分は見えません。 CH3CH3CH3POCOhTrimethylbenzoyl Diphenylphosphineoxide(TMDPO)CH3CH3CH3POCO+ 図 3 時間分解ESRの観測で用いる開始剤の光による開裂反応(上)と 開裂によって生成したリン中心ラジカルがメタクリル酸tertブチルに 付加してできる連鎖開始ラジカルの生成反応(下)

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