身体教育という考え方 -スポーツ文化からのアプローチ-(井上 邦子 著) -奈良教育大学 出版会-
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- 1 - 身体教育という考え方 -スポーツ文化からのアプローチ- 奈良教育大学 保健体育講座 井上 邦子 1.はじめに~「保健体育」とは 保健体育とは、幼稚園、保育園で行われる運動遊びをひとくくりに考えていいのなら、幼・小・中・髙、ときには大学まで我々が非常に長期にわたって教育を受けることになる教科といえるでしょう。さらに「学習指導要領」(文部科学省が各教科の目標や内容などの基準を定めたもの)には、保健体育は「生涯にわたって運動に親しむ資質や能力を育てる」ことを目的としていることが記されています。学校を卒業した後も運動を実践できる態度を育てることを役割としているところが、この教科の大きな特徴の一つといえるでしょう。これほどまでに私たちの一生とかかわる教科ですが、ではいったい何を学ぶものなのでしょうか?当たり前だと思っていることを改めて考えてみる、これが大学での勉強の醍醐味でもあります。 そもそも体育が教科名となったのは戦後のことですが、その元になるのは明治期に日本にもたらされた“Physical Education”という英語です。直訳すると「身体教育」ということになります。この“Physical Education”という言葉の広がりを考えてみれば、「体育=スポーツを単に実践するだけの教科」ではなさそうです。「身体を通じた身体の教育」を目指しているといえるかもしれません。しかも、それを生涯にわたって実践できることをめざしています。そうした広い意味が含まれている学びであることを、まずは押さえなければいけないでしょう。

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