身体教育という考え方 -スポーツ文化からのアプローチ-(井上 邦子 著) -奈良教育大学 出版会-
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- 4 - る全国大会へと出場できるという仕組みになっています。首都のナーダムでは、国の選りすぐりの猛者たちが集うことを特徴とすれば、その予選も兼ねている地方の大会は、どちらかと言うと村の男性だれでもが参加するとても素朴な相撲を楽しむ場です。 モンゴル語で力士のことは「ボフ」といいます。日本語の大相撲の「力士」は、いわゆる職業を示す言葉ですが、「ボフ」はそうした「特別な職業」を指す言葉ではなく、「力持ち」という特徴を指すような、そんなニュアンスがあるように感じます。日本の大相撲の力士は基本、相撲で生計を立てる「プロ」ですが、モンゴルの力士は伝統的には「プロ」ではありません(最近の傾向としては、プロも増えてきましたが、地方のボフはプロではない人も大勢います)。モンゴルで相撲をとったことがない男なんていない、男なら相撲の得意な技の一つや二つはもっている――モンゴルの人は皆同様にこう表現します。こうした言葉は、モンゴルと日本の相撲文化の広がりの違いを表すでしょう。日本では相撲をとったことがある人はどれくらいいるでしょうか? では、モンゴルの地でボフが相撲をとるということはどういうことなのでしょうか?モンゴルにおいて相撲は「自然の神様」にささげる儀礼でもあります。自然の神様を相撲で喜ばせ、自然の恵みを約束してもらうという大切な意味もあります。ただ、そうした意味だけで相撲を語ることは十分ではないでしょう。 モンゴル相撲の力士たち

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