勝つための食事 -持久力増大のための食事法-(中谷 昭 著) -奈良教育大学 出版会-
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- 2 - 2.持久力を規定する要因 持久力というのはマラソンのように長時間運動することができる能力です。サッカーなどのような球技においても試合の最後までバテることなく動き続けることができる体力も持久力です。この持久力を規定する要因としては主に最大酸素摂取量をあげることができます。持久的な運動においては運動中に酸素を体内に取り込み、骨格筋で糖質や脂質を燃焼することにより運動に必要なエネルギーを作り出しています。最大酸素摂取量はそれぞれの人が単位時間に体内に取り込むことができる酸素の量の限界値のことで、大きければ大きいほど多くのエネルギーを生み出すことができます。 一般人は1分間に体重1kg当たり約40mlの酸素を取り込むことができますが、マラソン選手は80ml前後の酸素を取り込むことができます。多くの酸素を取り込むことができれば大きなエネルギーを作り出すことができ、同じ時間運動する場合にはより高い運動強度で運動することができます。マラソンだとより速い速度で42.195kmを走ることができるし、サッカー選手なら試合の最後まで走り続けることができます。この他に持久力を規定する要因としてはバテていても頑張れるというようなメンタルの強さなどもありますが、運動時のエネルギー補給も含めてスポーツ選手の食事はとても重要です。まさに「腹が減っては戦はできぬ」です。 3.持久力を規定するエネルギー源 持久的運動時には糖質や脂質が主なエネルギー源となります。持久的運動でもウォーキングのように比較的軽い運動では脂質がエネルギー源の中心ですが、運動強度が上がるにつれて糖質の寄与率が増大します1)。この時用いられる脂質は骨格筋に蓄えられた脂肪(肉の脂身のところ)やおなかの周りにある皮下脂肪であり、糖質は骨格筋や肝臓に蓄えられたグリコーゲンです。グリコーゲンと聞けば「一粒300メートル」などと言っているキャラメルを思い出しませんか? 中等度強度の運動をした時には骨格筋のグリコーゲンは次第に減少し、グリコーゲンがほぼ枯渇する頃に運動が継続できなくなることが知られています2)。従って、持久力を規定するエネルギー源はグリコーゲンだと言えるのです。そ

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