勝つための食事 -持久力増大のための食事法-(中谷 昭 著) -奈良教育大学 出版会-
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- 3 - う、スタミナ源はご飯やパン、うどんやパスタなどの糖質(炭水化物とも言います)だったのです。「テキにカツ」では長時間の試合で力を発揮することができません。 4.持久力を増大するための食事 筋グリコーゲンが枯渇すると運動ができなくなるとすれば、あらかじめ骨格筋のグリコーゲン含量を増やしておくと同じ運動をしてもより長く運動することができるはずです。Bergströmたち3)は普通の食事、糖質の少ない食事及び糖質の多い食事をそれぞれ3日間食べさせた後、筋グリコーゲン含量を測定するとともに自転車運動による疲労困憊までの運動時間を計測しました。その結果、糖質の少ない食事では筋グリコーゲン含量が低下し、運動時間が短くなりましたが、糖質の多い食事を摂取した場合は筋グリコーゲン含量が増加し、運動時間も普通の食事の約2倍に増加しました。このことから持久力を増大するためには、糖質の多い食事をすれば良いということになります。 Qちゃんことマラソンの高橋尚子選手は試合3日前から丼物やうどんなどの糖質中心の食事、特に彼女の好きなお餅を食べてシドニーオリンピックで金メダルを取ったことが知られています4)。また、このような食事法をグリコーゲンローディングあるいは炭水化物ローディングと呼んでいます。 5.糖質をたくさん食べれば筋グリコーゲンは増加するのだろうか? Bergströmたち5)は片足で自転車を疲労困憊までこぎ、その後3日間糖質の多い食事をさせる実験を行っています。その結果、運動した方の足のグリコーゲン含量は運動直後はほぼ枯渇していましたが、運動しなかった方の足のグリコーゲンは全く減っていませんでした。翌日には運動をした足のグリコーゲン含量は回復し、運動2日目には運動前の2倍以上のグリコーゲン含量になったのに対して、運動しなかった方の足のグリコーゲン含量は全く変化がありませんでした。 このことから、糖質の多い食事をとるだけではだめで、あらかじめ運動をして筋グリコーゲンを一旦減少させておいてから糖質の多い食事をとる必要のあることが分かります。その後の研究から、グリコーゲンの減少が必要なので

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