勝つための食事 -持久力増大のための食事法-(中谷 昭 著) -奈良教育大学 出版会-
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- 5 - 7.トレーニングすると何故グリコーゲン含量が高くなるのか? グリコーゲンはグルコースが何百、何千とつながったもので、エネルギー源となる時は、グリコーゲンから1個ずつグルコースが切り離されて利用されます。運動後は血糖(血液中にあるグルコース)を骨格筋にとりこみグリコーゲンを再合成しますが、この時、グルコースを細胞内に取り込むのに糖輸送担体(グルコーストランスポーターとも言います)というトラックのような働きをするタンパク質が必要です。この糖輸送担体はトレーニングをすると増加することが知られています。トレーニングしたラットでグリコーゲンの回復が大きかったのは、この糖輸送担体が増加したからです。 8.おわりに 血糖値が高い状態にあることを糖尿病と呼びます。糖尿病の治療にはインスリンというホルモンが必要ですが、運動もインスリンと同じように骨格筋での糖の利用を促進する働きがあります。従って、糖尿病の予防や治療に運動は有効です。糖尿病や肥満などの生活習慣病を予防するために、ジョギングやウォーキングなど運動をすることを心がけましょう。 [ 引用文献 ] 1) Romijn J. A.他 Regulation of endogenous fat and carbohydrate metabolism in relation to exercise intensity and duration. Am.J.Physiol. 265(3):E380-E391(1993年) 2) Saltin B. 他 Muscle glycogen utilization during different intensities. In: Muscle metabolism during exercise. Edited by Pernow,W. and Saltin,B. Plenum Press New York, 289-299(1971年) 3) Bergström J.他 Muscle glycogen and physical performance. Acta Physiol.Scand. 71:140-150(1967年) 4) 金子ひろみ『食べて、走って、金メダル』(マガジンハウス、2000年) 5) Bergström J.他 Muscle glycogen synthesis after exercise; an enhancing factor localized to the muscle cell in man. Nature 5033:309-310(1966年) 6) Nakatani A.他 Effect of endurance exercise training on muscle glycogen supercompensation in rats. J.Appl.Physiol. 82(2):711-715(1997年) 7) 中谷 昭、橋本 恵『スポーツ種目の特性に対応した栄養と食 持久力を主体とした種目の場合』臨床スポーツ医学26:281-287(臨時増刊、2009年) 8) 中谷 昭、石澤里枝『持久力増大のための食事法 -炭水化物ローディングとそのメカニズムについて-』日本スポーツ栄養研究誌4:3-9(2011年)

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