葛水・葛葉の抗酸化能とその利用(杉山 薫 著) -奈良教育大学 出版会-
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- 1 - 葛水・葛葉の抗酸化能とその利用 奈良教育大学 家庭科教育講座 杉山 薫 私どもの研究室では、一貫して様々な食品素材、食品成分、食品製造中に産出される副産物や未利用素材の粉末系での抗酸化能について検討してきました。今回、奈良の特産である葛粉の製造中に、最初の葛根を水中で揉む段階で大量に産生される懸濁液、および春から秋にかけて旺盛な生命力で空地をたちまち覆ってしまう葛葉の抗酸化能とその抗酸化能を食品に応用した一例を紹介します。 マメ科の藤本、クズ(Pueraria lobate (Wild.) Ohwi) は、繁殖力が強く、荒地にも適応し、北海道南部以南の温帯域に広く分布しています。冬季肥大した根からは良質のデンプンが採れ、主に日本料理、和菓子の製造に用いられています。葛粉の製造は昔から奈良で盛んに行われてきました。現在国内では、火山灰質の土壌であるシラス台地で繁殖・生長した葛から採れる葛根を原料とした、九州の葛粉製造が最も盛んですが、奈良では、今でも宇陀市、御所市を中心に盛んに生産されています。 葛粉製造は葛の根を粉砕してから何度も寒水にさらして灰汁(アク)と不純物を流し去って沈殿したデンプンを乾燥する工程からできています。現在、この灰汁と不純物を含む懸濁液(実質的には葛根の成分を水抽出した水ですが、以下、葛水と表示することにします)の廃棄処理が葛粉製葛根 葛水

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