葛水・葛葉の抗酸化能とその利用(杉山 薫 著) -奈良教育大学 出版会-
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- 2 - 造業者の大きな負担になっています。そこで、奈良の地に根付いた大学として、奈良の特産品である葛粉製造に何か貢献できる研究をしようと、本研究に着手しました。 1.抗酸化能とは ここで、油脂の酸化と抗酸化能について説明します。 油脂とは、グリセロール(グリセリン)と脂肪酸がエステル結合した化合物で、一般的には脂肪酸が3個結合しているトリアシルグリセロール(トリグリセリド)を指します。この油脂の基本構造はどんな油脂でも同じです。油脂は脂肪酸のカルボキシル基(-COOH)が結合に使われ、他に酸性基がないので中性を示すため、中性脂肪とも呼ばれています。代表的な油脂は食用油です。 油脂には大豆油、キャノーラ油、エゴマ油、ベニバナ油、ヤシ油、ラード、ヘット、魚油など様々なものがあります。これらの油脂のうち、常温で液体のものを脂肪油(油)と呼び、固体のものを脂肪(脂)と呼びます。このような違いは結合している脂肪酸の種類や数、グリセロールへの結合位置に起因します。一般に、結合している脂肪酸に、脂肪酸を構成する炭素の数が大きいものほど、また、脂肪酸の炭素間に二重結合(不飽和結合)が少ないほど固体に、その反対であるほど液体になる傾向があります。油脂に結合している脂肪酸の種類はこのような物理的な性質だけではなく栄養価にも影響しています。 スリムな体型を願望する傾向が強い現代、油脂は肥満の元凶とされ、摂取が敬遠される傾向があります。しかしながら、ヒトは油脂を全く摂取せずに生きていくことは不可能です。ヒトには、体内で作ることができないが生きていくためには欠かせない脂肪酸があります。これを必須脂肪酸と呼んでいます。代表的なものは、リノール酸、α-リノレン酸、アラキドン酸、エイコサペンタエン酸(EPA、イコサペンタエン酸とも呼びIPAと略すこともある)、ドコサヘキサエン酸(DHA)があります。これらの脂肪酸は、二重結合を複数個もつという共通した構造があり、多価不飽和脂肪酸と呼ばれています。必須脂肪酸の摂取が低下すると、成人では欠乏症が現れづらいのですが、成長期の子どもでは現れやすく、成長が遅れ、毛髪の発育が悪く、体幹より皮膚がふすま状に剥離して感染症に罹患しやすいなどの症状が報告されています。必須脂肪酸は二重結合の

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