葛水・葛葉の抗酸化能とその利用(杉山 薫 著) -奈良教育大学 出版会-
6/13

- 5 - 2 成長(連鎖)反応 ヒドロペルオキシドROOHとペルオキシラジカルROO・の生成段階です。 3 停止反応 生成したラジカル同士が反応して重合物を形成する反応です。 開始反応によって反応が開始すると、自己増殖的に反応が促進され(自動酸化、自己酸化、自然酸化)、成長反応によってヒドロペルオキシドが蓄積します。 このヒドロペルオキシドを一次生成物と呼びます。蓄積したヒドロペルオキシドは分解してラジカルを形成し、ラジカル同士の結合による停止反応にいたり、アルデヒドやケトン、炭化水素、アルコールなどの各種低分子成分、二量体などの重合物、環状ペルオキシドなどのこれら二次生成物が形成されます。二次生成物が産生すると、色が付いたり、酸化臭がしたり、粘度が上昇して商品価値が低下するのみならず、前述の通り毒性が生じます。 この油脂の酸化を防止する能力を抗酸化能と呼び、油脂の酸化を防止するために添加される物質を抗酸化剤と呼びます。油脂の酸化は、光、高温、遷移元素(鉄、銅など)、酵素(リポキシゲナーゼ)、酸素(空気との接触面積の影響を含む)により促進されます。水分の存在は条件により促進または抑制します。このうち、光(遮光)、高温(冷蔵)、酵素(熱処理などによる失活)、酸素(真空パック、窒素充填)で酸化を防ぐことができます。しかしながら、酸素に接する通常の条件ではこのような処理を施しても酸化は進行します。そこで、酸化を抑制するために添加される、抗酸化能を有する物質が抗酸化剤です。 抗酸化剤には、ラジカルを捕捉して自動酸化の成長反応を抑制するラジカル阻害剤、過酸化物を非ラジカル分解して不活性にする過酸化物分解剤、遷移元素を捕捉し、キレート化合物を形成して遷移元素の酸化促進作用を阻害するキレート化剤、自らは抗酸化能をもたないが、ラジカル阻害剤と共存することにより、ラジカル阻害剤を賦活化する相乗剤(シナージスト)などがあります。また、抗酸化剤は起源によりトコフェロールに代表される天然抗酸化剤と、3-ブチル-4-ヒドロキシアニソール(BHA)やジブチルヒドロキシトルエン(BHT)に

元のページ 

10秒後に元のページに移動します

※このページを正しく表示するにはFlashPlayer10.2以上が必要です