葛水・葛葉の抗酸化能とその利用(杉山 薫 著) -奈良教育大学 出版会-
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- 7 - する観点から、特に保蔵(保存と貯蔵)において重要な意味を持ちます。 水の束縛の程度は、水の蒸気圧に現れます。この現象を利用して食品中に存在する自由水の割合の指標が水分活性(Aw)です。 3.実験方法 1 葛水・葛葉の乾燥粉末の調製 奈良県高市郡高取町の山林に自生する葛より葛根および葛葉を採取しそれぞれの乾燥粉末を調製しました。葛根は木槌で粉砕後、重量比3倍量の冷水を加えて調理用ミキサーで懸濁液を調製しました。これをさらし布製の袋に移し、5倍量の冷水中で十分に揉み、上部懸濁液を凍結乾燥後、乳鉢で粉砕して葛水乾燥粉末としました。葛水乾燥粉末の収率は葛根に対して7~8%でした。また、葛葉は採取後十分に水洗いし、凍結乾燥後、乳鉢で粉砕、35メッシュの篩にかけて葛葉乾燥粉末としました。収率は生葉に対して18~19%でした。 2 保温および油脂の酸化の確認 粉末試料(セルロース粉末(対照)、葛水または葛葉乾燥粉末)とリノール酸(油脂の代わりにリノール酸を使用しています)を重量比4:1で混合したものを保温試料としました。 この実験では、Aw0.2, Aw0.4, Aw0.6, Aw0.8, Aw1.0 に調整するために、相対湿度をそれぞれ 20%, 40%, 60%, 80%, 100% に調整した密閉容器を用意し、保温試料またはクッキーの粉末を入れ、試料(保温試料またはクッキー粉末)と密閉容器内の間の水分子の移動が平衡状態に達したとき、試料のAwが所定の値に調整されたとみなしました。 これらの密閉容器に酸素を充填後、50℃で保温し、定期的に酸化の程度を調べました。 油脂の酸化の確認は、過酸化物価(PV)を求めて行いました。PVは、一次酸化物であるヒドロペルオキシドの量を反映しています。すなわち、PVが上昇し

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