地域をつくる -地域居住学の視点から-(立松 麻衣子 著) -奈良教育大学 出版会-
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- 2 - らしになる人が多くなることがわかります。しかし、1人暮らしは高齢者に限ったことではなく、晩婚化や結婚をしない人が増加する傾向にあることから、どの年齢層においても1人暮らしの割合が増加しています。 地域コミュニティの希薄化は、住宅地や住宅形態(戸建住宅・集合住宅)に拘わらず全国的に生じている現象です。都市においてそれが顕著で、1人暮らしが増加するとさらに深刻な状況になることが考えられます。地域コミュニティの希薄化は、住民の孤立化を生み出しています。最近では、高齢者や女性、子どもの孤立と貧困も地域の問題になってきています。また、地域コミュニティの希薄化は災害時の対応を遅らせることから、今、平常時にも緊急時にも安心して暮らせるコミュニティづくりが地域に求められています。 3.持続発展をめざす地域事例 全国には、「地域の問題はわれわれ住民が解決していかなければ」と動き出している地域があります。それらの事例を概観してみましょう。 case1 「自治会を核にした住民の連帯感が笑顔をつくる」(島根県松江市) 1967年に分譲されたニュータウン。戸建住宅と集合住宅を包含する一つの自治会によって、住居の形で左右されない生活が送れるように自治運営がされている。また、自治会のなかに高齢者福祉を担う組織を作り、その組織が、定期的な調査の結果にもとづいて地域課題を整理し、必要な取り組みを精査している。そして、自助・共助・互助の取り組みを行いながら、今、小地域福祉活動を進める新しい「向こう三軒両隣」の関係性の構築に向けて動き始めている。 case2 「新旧住民の絆を深めて地域の発展を目指す」(京都市下京区) 京町屋が並ぶ職住共存の地域。1990年前後、次々とマンションが建ち始め、地域の約7割がマンション世帯になった。マンション住民の多くは地域への関心が薄く、今後の防犯力や見守り機能の低下、災害時の対応が懸念された。このような状況に対して、従来の自治基盤である自治連合会がまちづくりの組織

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