子どもはどうやって友達と一緒に遊び、表現をするようになるのか?(佐川 早季子 著) -奈良教育大学 出版会-
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そんな子どもたちの姿は、大人になった私たちの目には、不器用で未熟なものに映るかもしれません。でも、子どもたちのかかわりがどのように変わっていくのかを、じっくりと丁寧に見てみると、人と人が協働で何かを創りだそうとすることの原点が見えてくるように思います。 ここでは、幼稚園の4歳の男の子きいちくんが、製作コーナーで、一人でものをつくっている事例から、友達と言葉を交わして刺激を受けながら自己表現を行う事例が見られるまでの6ヶ月間の記録を通して、子どもがどのように友達から刺激を受けて表現をするようになるのかについて考えてみたいと思います1)。なお、ここで出てくる名前は、すべて仮名です。 2. 並行遊びの状態 幼稚園で観察を始めた当初、きいちくんは、よく一人で製作コーナーでものをつくっていました。仮面ライダーのグッズをつくっては、近くにいる私によく見せに来てくれました。図2は、そんな6月のある日の事例です。 きいちくんは、みきちゃんと向き合うところに立って、いつものように仮面ライダーのグッズをつくっていました。この図では、ビデオ記録をもとに、子どもが他の子どものつくっているものをじっと見たときは太い矢印()を、自分がつくったものを他の人に見せたときは細い点線の矢印()を、何をつくっているかを言葉で伝えたときは細い実線の矢印()を記しています。②の矢印の向きからわかるように、きいちくんは、ものをつくり終わったあと、つくったものを観察者である私に見せに来て、「これ、仮面ライダーの」と伝えています。このときのきいちくんにとっては、近くに子どもがいても、つくったものを見せたい相手は大人なのです。

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