子どもはどうやって友達と一緒に遊び、表現をするようになるのか?(佐川 早季子 著) -奈良教育大学 出版会-
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4. 何をつくっているかを言葉で伝えること 10月になりました。この幼稚園では、10月初めに運動会があります。運動会は、ただ子ども同士が競い合うだけでなく、クラスみんなで何かをすることで、仲間意識やクラスの一員だという意識が盛り上がる行事でもあります。そんなとき、仲間と一緒に遊びたいというきいちくんの思いが表れたような事例3が見られました。 図4は、10月のきいちくんの事例です。きいちくんは、最初はおさむくんやかいじくんと遊んでいたわけではありませんでした。でもおさむくんとかいじくんが隣に近寄って、おしゃべりをしているのを見たきいちくんは、二人の仲に入りたいと思ったのでしょう。おさむくんとかいじくんの間にぐっと体を入れて、真ん中に入りました。すると、やはり視野が重なったためか、相手のつくったものが視野に入り、三人は、互いのつくったものを見合います。そして、きいちくんが「おれ、魔法使いつくってるんだ」とかいじくんに言葉で伝えています。言葉で伝え合う前に、体を寄せて、視野を重ねて、相手は「何をしようとしているのかな」と意図を理解しようとし、自分がつくっているものを伝えるのです。 5. 友達から受けた刺激を自分の表現につなげる 11月は、運動会をきっかけに盛り上がった仲間への関心が、どんどん深まってきます。友達と遊んだ経験も増えてきて、どの友達とどんな遊びができるか、どうやって遊んだらいいかがわかってきます。 図5では、きいちくんは、「仮面ライダーごっこをする」というゴールを、製作コーナーにいる友達と伝え合ってから、その仮面ライダーごっこ図4 10月のきいちくんの事例3 <つくったものを見せる>

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