『源氏物語』がどのように継承されてきたかを学ぶ(有馬 義貴 著) -奈良教育大学 出版会-
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『源氏物語』がどのように継承されてきたかを学ぶ 奈良教育大学 国語教育講座 有馬 義貴 1.はじめに 『源氏物語』という古典文学作品があることを知っていますか。また、それがどのような内容の作品であるか、知っていますか。高等学校の教科書に掲載される定番の作品の一つですから、知っている人が多いでしょう。では、その『源氏物語』が、どのように現代まで読み継がれてきたのか、どのように継承されてきたのか、知っていますか。 2.読み継がれてきた『源氏物語』 古典文学作品について、例えば、「長い年月にわたって、それぞれの時代に享受され、批判に耐え抜いてきたもの」1といった説明がなされることがあります。しかし、『源氏物語』といった作品名やそのおおよその内容については知っていても、それが「それぞれの時代に」どのように「享受され」てきたのかまではよく知らない、という人はおそらく少なくないでしょう。あるいは、そのようなことについて考えてみたことがないという人も少なくないかもしれません。教科書や参考書、試験の中でしか古典文学作品に触れていないと、読み解く対象としての文章自体にのみ注目しがちで、昔からあった作品だという認識はあるにしても、それが古くから多くの人々に読み継がれてきたものであるということについては、なかなか意識をしにくいように思われます。 1 世羅博昭氏「古典領域における実践研究の成果と展望」(『国語科教育学研究の成果と展望』明治図書出版、2002年)。

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