『源氏物語』がどのように継承されてきたかを学ぶ(有馬 義貴 著) -奈良教育大学 出版会-
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くから読み継がれてきたものであるということを前提に、その普遍的な魅力を探るといった立場から、作品自体を読むことに重きが置かれ、ほとんどの時間が費やされてきたような印象があります。 勿論、作品の内容を捉えることも重要なことですが、一方で、これまで述べてきたように、その作品がどのように読み継がれてきたのか、受け継がれてきたのか、という点に目を向けることで学べる要素も少なくないのではないでしょうか。片桐洋一氏は、「学校教育の場に「古典の時間」があるから「古典」なのではなく、人々に読まれ続け、愛され続けたから「古典」なのです。そのことをわかっていただくためには、「創作の文学史」だけではなく、「享受の文学史」という視点をもっと導入しなければならないと思います」5 と、いみじくも述べていますが、首肯すべき提言といえるでしょう。 5.おわりに 学習指導要領において「伝統や文化に関する教育の充実」が掲げられて以降、古典教育(学習)の果たすべき役割はより重要視されるようになってきました。2011年度からは小学校でも古典教育(学習)がおこなわれています。中学校・高等学校での古典教育(学習)もそれを踏まえたものとなっていくでしょう。古典の魅力や価値について、作品自体の内容からも勿論ですが、それ以外の観点からも多角的にとらえていくことが、ますます必要になってくるのではないでしょうか。今後の古典教育(学習)はどうあるべきなのか、ぜひ多くの人に考えてみてほしい問題です。 5 片桐洋一氏「『伊勢物語』の本文と『伊勢物語』の享受」(『伊勢と源氏 物語本文の受容』臨川書店、2000年)。

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