人間ジオ宝(河本 大地 著) -奈良教育大学 出版会-
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います。芸能(雅楽、能楽、文楽、歌舞伎、組踊、音楽、舞踊、演芸)分野と、工芸技術(陶芸、染織、漆芸、金工、金工(刀剣)、人形、木竹工、諸工芸、和紙)分野が対象です。この方々には、国が年額200万円の特別助成金を交付しています。 「人間ジオ宝」には、そんな制度はありません。人間国宝と同様に説明するなら、「ジオ」の影響を暮らしの中に顕著に保持してきた人の通称です。認定するのはみなさんです。地形・地質といった「ジオ」と顕著に結びついた生活文化(山の暮らし、海の暮らし、川と結びついた暮らし、鉱山のある暮らし、甚大な被災の経験者の暮らしなど)が対象で、風土や暮らし、それらが織りなす「地域多様性」を生きざまとして見せることができる、その地ならではの生活文化版人間国宝のような存在です。その生きざまは、地形・地質をはじめとする「ジオ」と、その上で成り立っている生態系に大きな影響を受けて培われてきました。 しかし、「ジオ」を基盤とした人々の暮らしや風土のありよう、地域多様性は薄れてきています。次章からは、具体的な例を見ていきましょう。 3.小代おじろって? 私がご縁をいただいて2008年から通い続けている地域があります。その名は小代おじろ。兵庫県北部(但馬たじま地方)の鳥取県境にある山間地域です。住所表記は、美方郡みかたぐん香美町かみちょう小代区おじろく。2005年に3つの町が合併して香美町ができる前は、美方町みかたちょうだったエリアです。合併の際、住民の要望により、難読だけれども美方よりも古くから用いられてきた「小代」という地名を復活させました。 小代という地名は、小さな田を意味します。小代には、地すべり地を活かした棚田が発達し

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