知っているってどんなこと?-高校倫理と現象学-(梶尾 悠史 著) -奈良教育大学 出版会-
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知っているってどんなこと? -高校倫理と現象学- 奈良教育大学 社会科教育講座 梶尾 悠史 はじめまして。梶尾悠史といいます。奈良教育大学で哲学・倫理学を研究しています。私は、特にE. フッサール(1859‐1938)という哲学者の思想に親しんできました。この人物は現象学という学問分野を打ち立てたことで有名で、間違いなく現代哲学のビッグネームの一人に数え入れられます。ところがこの人物、一般にはあまり知られていないようです。ハイデッガーやサルトルなど彼の後継者たちの人気に比べると、どうしても影が薄くなりがちです。残念なことです。そこで今回、高校倫理でも紹介されるお馴染みの哲学者と関係づけながら、フッサールの思想を紹介したいと思います。フッサール現象学の知られざる魅力に触れてもらえれば(ついでに高校倫理を復習してもらえたら)うれしいです。では始めましょう。 1. 認識論という問い 授業に退屈したあなたは何となく、窓越しに校庭の方へ目をやります。すると、たとえば卒業生によって寄贈された記念樹が、自分のいる教室から見えるでしょう。が、すぐと疑問が頭をもたげてきます。(あれは本当にその記念樹なのか?)もしかすると、あなたは真偽のほどを確かめるために教室を飛び出し、その木のある場所に駆けつけるかもしれません。そして、「平成十二年度卒業生寄贈」の立札が根元に立っているのを、首尾よくその目で見届け、自分の知識の正しさを確信します。めでたし、めでたし。

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