世界の数学科授業・日本の数学科授業(舟橋 友香 著) -奈良教育大学 出版会-
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図1:シートワークで取り組んでいる課題の内容 日本の授業のこのような展開は、子ども自身が問題に立ち向かうこと、「重要な数学に子ども自身がもがき苦しむこと(struggle)」(Hiebert & Grouws, 2007, p.387)が、単に目の前の問題の解決に関わる手続きのみならず、数学的な考え方や問題に立ち向かう姿勢を育てるために重要であるといった認識に支えられているのでしょう。 一方で、教室内での相互行為の様相に関して、その形態や発話に焦点を当てた分析結果をみると、それまでの国際比較研究において日本の数学科授業の優れた特徴として指摘されてきた事柄について、ドイツにも類似した特徴をみることができます。例えば、日本の授業には、一授業内に扱う数学的内容に首尾一貫性がみられることが指摘されてきました(Stevenson & Stigler, 1992)。この点について、「1授業内で扱われた主題の数」という分析項目をみると、日本とドイツはともに「1つ」という授業の割合が極めて高いことがわかります(図2)。また、数学的概念の導入方法について、アメリカの授業では情報それ自体を教師が生徒に与えていたのに対し、日本とドイツの授業では、教師と生徒が共同で授業を展開しながら新たな数学的概念を導入していたという点も類似しています(図3)(Stigler et al., 1999, p.52)。 89.440.895.86.315.13.54.344.10.7020406080100ドイツ日本アメリカPercentage of Seatwork Time手続きの練習概念の適用新たな解法の考案

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