富士山登山時によくみられる身体の変化-内科系疾患発症の予防の視点から-(髙木 祐介 著) -奈良教育大学 出版会-
2/10

富士山登山時によくみられる身体の変化 -内科系疾患発症の予防の視点から- 奈良教育大学 保健体育講座 髙木 祐介 1. はじめに 富士山(標高 3,776 m)が日本で一番高い山であるということは、おそらく小学生の皆さんでも知っていることだと思います。「1年生になった~ら・・・」、この歌詞から始まる歌はとても有名ですね。「・・・(略)100人で食べたいな、富士山の上でおむすびを、パックン、パックン、パックン、と」、友達と助け合って登頂したその達成感と日本一高い場所からの景色に酔いしれながらのおむすびは、さぞかし美味しいものだと感じられます。 新幹線で静岡県を通過する際、晴れの日には富士山を眺めることができます。「一度は富士山に登ってみたい」そう言われる方々はたくさんいます。特に、大学生を含め若い方で目指されるケースが多くみられます。一方、富士山に登ることが決定してから、「ちゃんと頂上まで登れるか心配です」と相談に来られる方も大勢います。その多くが「高山病」という症状への不安です。 2. よくみられる症状 - 急性高山病 地球上では、高度が上昇するにつれ、空気の圧力である気圧が低下します。同時に、空気中にある酸素の圧力も低下します。すると、高所では空気を吸った際、体の中に入る酸素の量が海面レベルに比べ低下します。酸素は、ヒトの生命維持に欠かせない気体です。酸素は吸気された後、血液中のヘモグロビンと呼ばれる血色素と結合し、体内を循環します。動脈血中でヘモグロビンと結合する酸素の割合のことを「動脈血酸素飽和度」といい、地上における健常者

元のページ 

10秒後に元のページに移動します

page 2

※このページを正しく表示するにはFlashPlayer10.2以上が必要です